ブラジル:カーニバル期間中の公共スペースへの権利を求め市民が抗議運動

サルバドールのカーニバル期間中に公共のスペースが民間の企業に委託されることに対する抗議集会が、1月14日に開かれた。このカーニバルは世界最大規模の路上祭りの一つであり、今年は2月18日から始まることになっている。この抗議はバイア州サルバドール市長、Joao Henriqueとプレミアム社に対してカーニバル中一時的に観客席を建築することに異議を申し立てるものだ。同国では「カマロッチ」として知られるこの観客席は、完成すればこの抗議集会が開かれているオンジーナ地域のメインストリートである公共スペースの大部分を占めることになる。

Blog da Ilha [pt](訳注:イタパリカ島のウエブサイト)によると、その土地は連邦政府の所有ではあるが、市役所がすでに民間のプレミアム社に、特別観覧席「カマロッチ サルバドール」のための使用許可を出しているという。連邦資産局(ポルトガル語ではSPUと省略)はプレミアム社に対して374,000レアル(210,000USドル)の罰金を科しているが、それでも「カマロッチ サルバドール」は作られるだろう。Blog da Ilha [pt] はまた、「カマロッチ サルバドール」の料金は1日あたり、1人490レアル(272USドル)から990レアル(550USドル)、またカーニバル期間中を通しての利用は4890レアル(2920USドル)にまでなるとも伝えている。

People who want to enjoy the street Carnival of Salvador without paying get squeezed by camarotes on one side and paid "carnival blocks" on the other. Photo from the Ondina area, Carnival 2010, by Rodrigo Sá on Flickr (CC BY 2.0)

無料でサルバドールのストリートカーニバルを楽しもうとする人たちは、一方をカマロッチから、もう一方をこれも参加費用のかかる「カーニバルブロッコ(訳注:ブロック)」から押しやられる形になる。Rodrigo Sáによる写真、2010年カーニバル、オンジーナ地域より撮影 Flickrに掲載(CCBY2.0)

沿道に「カマロッチ」が次々と作られること以外にもまだ問題はある。カーニバル「ブロッコ」の増加も、カーニバルを路上でタダで楽しむ権利を奪いつつある。「ブロッコ」というのはトリオエレトリコ(音響装置を積んだトラック)の上でバンドが演奏するもので、人々はそのブロッコ揃いの服(アバダ)を買って参加する。お金を払って参加している人とそうでない人たちは、セキュリティガードがトリオエレトリコとアバダを着た人たちの周りにコードを張って分けられることになる。バンドが通りを進みながら演奏されると、無料で参加している人たちは「カマロッチ」と「ブロッコ」、両方からに押しつぶされる形になる。

 

カーニバルはみんなのもの

"Incompetent government, decadent society. React. Join us."

「無能な政府、未来なき社会、立ちあがろう、我々と共に」Clarissa Pachecoによる写真、Flickrに掲載(CC BY2.0)

この運動の発端はインターネットだった。ツイッター(@OcupaSalvador)やフェイスブック(OcupaSalvador)にグループをたちあげ、カーニバルを無料で楽しめるように公共スペースを維持しようと働きかけた。そしてこの抗議運動は世界中のOccupyMovementからある程度影響を受けていることを示したのだ。

7th Instance of the Treasury Courtの判事、Lisbete Mariaが通りでの抗議集会を禁止する一時命令を出したにもかかわらず、1月14日、人々は集結してきた。サルバドール市民が、カーニバルは金もうけのためでなく市民のためのカーニバルであると主張できるよう、ソーシャルメディアを通して反対運動は続いていたのだ。

バイア州立大学の前学部長、Naomar Almeida Filho(@naomaralmeida)はツイッターに一連の写真メッセージ[pt]を載せている。そこには「民間の観客席に貸し出して市民をオンジーナ広場から締め出すな」と書かれていた。

DESOCUPA foi um flash-mob convocado por redes sociais. Levou 1000 pessoas numa tarde chuvosa a Ondina. A imprensa noticiou timidamente

「DESOCUPA」とはソーシャルメディアがよびかけた抗議集会である。雨もようの午後、オンジーナ地域には1000人もの人たちが集まった。これに関して報道は慎重だ。

"The square belongs to the people / as the sky is for the condor / it is the sight where freedom / creates eagles in its warmth" Castro Alves. Photo by Clarissa Pacheco on Flickr (CC BY 2.0)

「通りはみんなのものだ!カマラッチ、断固反対! Clarissa Pachecoによる写真、Flickrに掲載(CCBY2.0)

バイア州立大学準教授でサイバーカルデャーの専門家、Andre Lemos(@amdrelemos)はツイッターでこう言っている [pt]。

Carro, desocupa a calçada; camarote, desocupa a praia; som alto, desocupa o ambiente; violência, desocupa os espíritos – #desocupa salvador.

車、歩道から締め出そう;民間の観客席、海岸から取り除こう;騒がしい音楽、周りから消し去り;暴力、意識から排除しよう- #desocupa salvador

ユーチューブの動画では老若男女がマイクを通して口々に抗議をし、 「Desocupa」(出ていけ)と叫んでいる。

 

あらゆる違いを超え融合

"The street is yours, nigga! Camarote No". Photo by Clarissa Pacheco on Flickr (CC BY 2.0)

「ご迷惑をおかけします、私たちはより良い世界のために動いているのです。」“Clarissa Pachecoによる写真、Flickrに掲載(CCBY2.0)

昔のサルバドールのカーニバルはもっとみんなに開かれた、親しみやすいパーティーだった。さまざまな社会的、文化的背景を持つ人たちが同じ広場で一緒になれる瞬間だった。しかしこの20年くらいで様変わりした。カマロッチや、参加料をとるカーニバル「ブロッコ」が表れたからだ。

サルバドールのカーニバルに民間企業が介入したのは、金もうけの面だけではない。しばしば上げられる根強い問題、安全面があるからである

全国自治体連盟(ポルトガル語でCNNと省略)が公表したデータによると、1998年から2008年の10年間でサルバドール市は銃による死亡率がブラジル国内で一番高い、とRádio Metrópole website[pt] は伝えている。

カーニバル中沿道の「カマロッチの拡大は、無料で楽しめるスペースを減らすことになる。貧富の格差はますます広がり、両者の軋轢は広がるばかりだ。Wikitravelのサイトでは安全情報に関して率直に記している。「社会の格差ゆえに、サルバドールは通りでの犯罪の多さで有名である。」

"My apologies for the inconvenience, we are working for a better world!" Photo Clarissa Pacheco on Flickr (CC BY 2.0)

「ご迷惑をおかけします、私たちはより良い世界のために動いているのです。」“Clarissa Pachecoによる写真、Flickrに掲載(CCBY2.0)

フェイスブックで、Ermest Dinizは実際に社会が一つになっていた頃のカーニバルに考え巡らせている[pt]。

Com a cara-de-pau de um turismo excludente e industrializado, a cidade, ano a ano, é loteada e paralisada para que o Carnaval possa passar. A festa foi descaracterizada há muito e pouco sobrou do Carnaval que celebra a suspensão de todas as diferenças.

排他的で都市化された厚かましい観光産業のせいだ。カーニバルを通り過ぎさせるために、この市は年々侵略され、機能の果たさなくなってきた。かつてあったような独特の雰囲気は既に失われ、違いを超えた人々の交流を歓んでいたカーニバルの姿はもうあまり残っていない。

校正者:Kanako Hasegawa

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