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マケドニア: スコピエにおける大気汚染のオンライン公表の透明性が問題に

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, マケドニア共和国, テクノロジー, デジタル・アクティビズム, 市民メディア, 法律, 環境, 行政

NGO 団体である GreenBox は、スコピエ市役所が、大気汚染レベルの最新情報を市民に知らせるオンラインシステムに予算を充てる考えがないことをブログで伝えている。

スコピエ市中心部にある大気汚染自動測定装置は、昨年、大気汚染の警戒レベル [1]について報じた際に物議をかもした。

監視団の中には、市の中心部における政府出資の建設ブームによって、がん関連 PM10 の粉じんが大気中に浮遊しているとする人もいた。市の中心部はスコピエ2014プロジェクト [2]によって巨大な工事現場に変わってしまったのだ。周辺地域もいわゆる「都会のマフィア」の活動の中心地で、地方自治体内部のコネを使って都市計画法 を改変し、公園、駐車場および戸建ての住宅を、大規模で収益性の高い高層住宅街やオフィス街、店舗などに建て替えている。

未だに劣悪である大気環境についてメディア数社(1 [3],2 [4],3 [5],4 [6];mk)が報道して以降、スコピエ市が運営するオンラインシステム「スコピエブリージング」 [7][mk]は2012年1月初めからアクセス不能になった(1 [8],2 [9];mk)。ウェブページにはこのように書かれていた。「ソフトウェアのアップグレード中。近日中に利用可能になります」

2012年1月上旬以降「作業中」である
スコピエブリージング監視システムのスクリーンショット。

グリーンボックスはブログに以下の内容を投稿した [10][mk]。

スコピエ中心部の大気環境が知りたい? それならスノーシューズを履いて、パーカーを着て、帽子をかぶって、マフラーを巻いて、手袋をはめて、Šmizla 像(よくあるバレーガール [11]やバービー人形みたいなもの)の傍にあるディスプレイまでデータを確認しに歩いてマケドニア通りへ出かけよう。「スコピエブリージング」のウェブサイトは旧暦のクリスマス(1月7日)まで実況データを公開していたが、現在は稼働しておらず、今後もおそらく再開する見込みはない。

Air pollution measuring station (right), Šmizla statue (left). Photo by GreenBox blog, republished with permission. [12]

大気汚染測定所(右)と Šmizla 像(左)。グリーンボックスのブログ写真。転載許可済。

一年間システムのメンテナンスを請け負っていた環境分析会社 Farmahem は、単なるソフトウェアのアップグレードだけではない重大な問題だと正式にコメントを発表した。Farmahem の契約は終了したが、スコピエ市が契約の更新をしていないという状況である。Farmahem は公開アーカイブの計測データを用いてシステムのアップグレードを行うことを望んでいると伝えられている。しかし、今のところは市民が市役所に問い合わせをしないといけない。そしてその市役所がこのオンラインツールの透明性の運命を決めるのだ。

スコピエ市の代表は、大気環境データのオンライン公開を存続することに全く無関心のようだ。(スコピエ市の)広報担当の Nedelčo Krstevski 氏は、ウェブサイトは会社側の善意により会社主導で作られたのだと話している。

「ウェブサイトは我々が所有しているものではなかった。今のところ、我々とFarmahemのどちらが管理しているのか断言できない。大切なのは、大気汚染測定所が機能し、市民が装置の画面を見て大気環境情報を得られるようにすることだ。」と、Krstevski 氏は述べている。

市の代表者らは、「スコピエブリージング」を稼働し続けるためには、公共調達手続きを開始する必要があることを認めているが、市側に言わせれば調達手続きは非常に複雑で、一般入札も考えているとのことだ。ただ、それが行われるかどうかはわかっていない。

「現時点ではサイトが存続するのかどうかについて何もコメントできない。」とKrstevski 氏は答えた。

「スコピエブリージング」は、首都の大気汚染が法律で認められている最大値より10倍も高いことを市民に知らしめた。これにより外出禁止が推奨されるという事態になった。世論の圧力によって市役所および環境省が工業施設近隣に調査団を派遣した後は、汚染レベルが一時的に低下した。保健所の調査 [13][mk]によると、粉じん濃度が現在の3分の1 に低下すれば、スコピエは死者117名および重症患者420名の発生を回避できるだろうとのことである。

この記事の校正は Yasuhiro Hagiwara [14] が担当しました。