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スリランカ:僧侶がモスクの破壊を要求

カテゴリー: 南アジア, スリランカ, 人権, 宗教, 市民メディア, 政治, 法律

スリランカは多宗教・多文化社会であるが、最近の宗教的な不寛容に関する事件の数々をうけて、ネット上のコミュニティではそのありかたについて議論が続いている。先週の金曜日(訳注:2012年4月20日)、仏教の僧侶や地元住民ら約2千人が仏教の聖地に存在するヒンドゥー教寺院およびモスクを破壊することを求め、ダンブッラ市街で暴力的な抗議活動 [1] を行った。

警察はモスクから信者たちを撤退させ、金曜礼拝(訳注:イスラム教では金曜日の集団礼拝が義務付けられている)は中止された。地元のイスラム教徒たちは、モスクは50年も前からそこにあったのだと主張している。

Raashid Riza [2]は次のように述べている。

報告によると、前日の夜、モスクに数本の火炎瓶が投げ込まれたが被害は小さかった。状況をコントロールするため、警備が敷かれている。ムスリム社会を狙った攻撃は、人種差別主義的なシンハラ人グループに扇動されている。彼らのほとんどはフーリガンで、特定のイデオロギーというよりは、騒ぎ立てることや、それによって注目されることによってさらに刺激されている。

A Mosque in Colombo, Sri Lanka. Image by Angelo Samarawickrema.Copyright Demotix [3]

スリランカ、コロンボのモスク。 Angelo Samarawickrema撮影。Copyright Demotix

Groundviews [4] はモスクの契約についての記事を投稿し、この建造物がなぜ違法になるのか問うた。議論は、政府が世論の要求に屈してモスクの破壊を決めた [5] 後も続いた。 Groundviews [6]さらに暴露する。

ランギリ・ダンブッラ支部の大僧正であるInamaluwe Sumangala theroは、彼の寺の近くにあるモスク及びヒンドゥー教寺院の存在をめぐって 現在も続くダンブッラの緊張状態 [7] に関する重要人物の一人である。彼が扇動した暴力行為に対する世間の抗議に応えるためと思われるが、 彼はBBCに対し、 [8] 暴力にかかわっている僧侶たちのテレビ映像―その一人は衣服を脱ぎ、モスクに対して体をさらしている [7] ―は偽物だと述べた。

しかし、証拠は別の事実を示している。Inamaluwe Sumangala theroは私立のラジオ局であるRangiri Radioのトップであるが、Rangiri RadioのホームページにおいてもFacebookページにおいても、群衆のもっとも暴力的な瞬間を見せる以下の映像が掲載されている。

Sri Lankan Doctor [9] は以下のように述べる。

2012年4月20日に彼ら自身が行ったことにより、ダンブッラの仏教僧侶たちは仏教徒の世界を動揺させた。

ダンブッラのモスクへの攻撃は、スリランカが数世紀にわたって経験しているムスリムと仏教徒の結びつきから切り離して考えるべきものだ。少数のこのような事件だけによって、その結びつきは壊れるものではない。ムスリム社会からの次のツイートは、このような考え方を裏付けている。

@muslimLK [10]: スリランカのムスリムはダンブッラの問題に対し、敵対的にならず、賢明な、合法的な、許容的なそして模範的な態度で対応するべきだ。すべてはアッラーの思し召し。

Serendipity [11]はブログで次のように指摘している。

宗教的な偏見をもった人々が何を公言しようと、スリランカは国として排他的に上座部仏教を保護する責任を持っているわけではなく、単に仏教国であるというだけです。憲法は『仏教は守り育てられるべきである』と述べているだけであり、その言い回しが様々な解釈を生むのであれば、最高裁判所にこの言葉が何を意味しているのか決めるよう求める必要があるでしょう。

これらのニュースを幅広く取り上げたIndi.ca [12]は以下のような意見を述べている。

ムスリムたちはスリランカ人だ。彼らは隣人であり、友人でもある。しかし、しかし、今日、かれ
らは少数民族になっており、経済的成長の途上において多くの人々から疑いの目で見られている。[..]

真面目な話、ここは小さな島で、私たちは一緒に暮らさなければいけない。文化的な摩擦やちょっとした腹立ちは忘れなければ。ムスリムたちは友人あり、隣人であり、また、そのように扱われるのにふさわしい人々だ。[..] 事件の詳細がどうであろうと、そのことはスリランカのムスリム社会がこの国の不可欠な、尊重すべき一部であり、つまりは私たちの家族であるという事実を強調することはとても重要だ。

ダンブッラの件については悲しく思う。私たちは今後も、友人や隣人を嫌うような恰好悪いことはしたくない。

この記事の校正はYusuke Matsubara [13]が担当しました。