ロシア人とタバコ:辛いさよなら

ロシアは世界で最もタバコを吸う国のひとつである。ロシア人のうち39%が喫煙するなか、男性の喫煙率は60%に上る(ちなみに、イギリス人の喫煙率は男女ともに約21%である)。ロシアの喫煙に対する姿勢や法律は他のヨーロッパ諸国に比べると非常にゆるい。ロシアでは、バーやレストラン・カフェだけでなく、学校・病院・あらゆる公共交通機関・政府庁舎・アパートで自由にタバコが吸える。タバコの広告が国内の街角や地下鉄を飾り、そして出版物のページを埋める。タバコ税は微々たるもので、マルボロ一箱が2ドル以下で買え、国産の銘柄についてはその半分以下で手に入れる事が出来る。

Russian's smoking habits know few boundaries. "Bad Habit," Volgograd, Russia, 22 November 2009, photo by Mohd Hafizuddin Husin, CC 2.0.

ロシア人の喫煙習慣にはほとんど限度がない。「悪しき習慣」ロシアのヴォルゴグラードにて 2009年11月22日、Mohd Hafizuddin Husin撮影、CC 2.0

ロシア政府はこの状況を変えようと、2013年6月1日、「「受動喫煙と喫煙による影響から市民の健康を守る」法律」 [ru]を新しく設けた。この法律は政府庁舎・教育施設・医療施設・アパートのエレベーターや廊下、駅の構内や電車の中での喫煙を禁止、さらにタバコ広告に対しては厳しい制限を設け、タバコ会社への増税および未成年にタバコを販売した場合の罰則を強化するもので、禁煙制度を段階的に店舗やカフェ、バー、レストランに導入する足掛かりとなる。

去る2012年10月、ドミトリー・メドヴェージェフ首相は自身のブログで、ロシアの喫煙率が異常に高いこと(唯一、中国だけが同等レベル)、そして1990年代からロシア人女性の喫煙率が7%から22%に上昇し、初めて喫煙した年齢が15歳から11歳に低下したことに言及し、政府がこのような法律を導入した理由を説明している。(下のビデオ 参照) 公的な統計 [ru]は70〜80%の市民がこの新しい法律に賛成であると示しているが、ブログユーザーのあいだでは物議を醸しており、多くは様々な理由から強く反対している。ブロガーのNicolai Troitsky(LiveJournalのプロフィールにタバコを楽しむ姿を載せている)は、最近設立された「ロシア喫煙者の権利運動」に参加したと主張した[ru]。Troitskyは「喫煙者の虐殺を止めろ」と強い表現で自身のブログに書き込み、この法律を非難した[ru]。

тоталитарная, гестаповская, фашистская борьба с курильщиками, больше похожая на истребление, на геноцид, противоречит всем нормам здравого смысла. Целая немалая группа граждан демонстративно лишается элементарных прав.

「喫煙者に対するこの全体主義的、ゲシュタポ的でファシストのような争いは、虐殺や駆除のようなもので、全ての常識的な基準に反している。市民全体が基本的人権を侵されているんだ。

Troitskyは彼がきっかけでネット上に巻き起こった議論について、ゴドウィンの法則 を確認し喜んでいるが、大言壮語を得意とするのは喫煙者だけではない。ロシア議会代理イーゴリ・レベデフ「喫煙者の権利とは、薬物中毒者の権利や殺人者の権利のことである」という記事を執筆した[ru]:

Привычка, конечно, сильна. Причем не только привычка курильщиков к никотину, но и наша общая привычка видеть вокруг себя людей с белыми бумажными дымящимися палочками во рту. Надо сделать так, чтобы вид прилюдно курящего человека вызывал такую же реакцию, как и вид прилюдно “ширяющегося” наркомана. По сути, это одно и то же.

慣習は確かに根深い。その慣習とは、喫煙者のものだけではなく、タバコを口にくわえる人々を見慣れてしまっている我々の慣習もだ。我々はだれかが人前でタバコを吸っているのを見たら、薬物中毒者が人前で注射をしているのを見たときと同じような反応をするようにしなければ。結局、喫煙者も薬物中毒者と同じなのだ。

極右政党ロシア自由民主党の一員であるレベデフは、さらに「喫煙はロシアの風習ではない。この習慣は(300年前に)ピョートル一世が持ち込んだものだ」と主張した。

彼よりもリベラルなAnton Nossikは、法律に含まれる強制的な処置は実を結ばないという理由から、この法律を批判している。[ru]

в любой стране, где за последние 10 лет достигнуты ощутимые успехи в борьбе с курением, мы видим огромный спектр усилий, направленных именно на помощь курильщикам в бросании курить… А там, где это направление работы задвинуто, никакие даже самые жёсткие репрессивные меры не помогают. Мы это недавно тут обсуждали на примере французских драконовских мер, результат которых с 2000 по 2010 год оказался нулевым. И британских программ помощи курильщикам, которые за тот же период помогли снизить число страдающих зависимостью в полтора раза.

禁煙でかなりの成功を収めたどの国でも、喫煙者の禁煙援助を中心とした努力が多く見受けられる。しかし、強制的な方法や厳しく抑圧的なやり方ではうまくいかない。最近では、(Nossikのブログ上で)2000から2010年のフランスの抑圧的な処置が何も効果をなさなかった例について議論したが、同時期にイギリスで行われた喫煙者を援助するプログラムでは、ニコチン依存で苦しむ人が1.5倍減少したのだ。

しかしロシア人の多くはこの法律を権利の問題よりも、単にどのくらい強制されるのか、また強制可能なのかに注目している。Osik101195は露骨にこうツイートした[ru]:

Если вы думаете, что антитабачный закон будут соблюдать в России, то вы точно ебанутый

もしロシアでこの反タバコ法が順守されると思うなら、あんたらは全くのくそ馬鹿野郎だ。

この法律が導入された数日後、MindNastyはこの禁止令の効果が厳しい状況にある様子をこう表した。[ru]

В тамбуре электрички курили два контролера, выдыхали дым в табличку “Не курить”. Обсуждали антитабачный закон. Не вижу смысла в этом законе.

車両と車両の間で、二人の検札係が「喫煙禁止」の表示に向かって煙を吹きかけながらタバコを吸っていた。彼らは反タバコ法について議論していた。私はこの法律の意味がわからない。

様々な議論がされているが、喫煙に関するロシアの新しい法律は、西洋で20年以上に渡って取り入れられているものと大体同じである(偶然ではなく、ロシアの国の喫煙率は30年前のイギリスとほぼ同じである)。毎年40万人が喫煙による病気で亡くなっているため、ロシア政府は国民の健康促進と反タバコ法の導入に躍起になっているが、果たして国民が従うか、そして警察がこの法を実施する準備ができているかはこれからわかることだ。

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