犯罪人引渡法をめぐり、クロアチアEU加盟の多難なスタート

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新しくEUメンバーとなったクロアチアは、初めて欧州委員会と交えた論戦で、いささか返り討ちにあうことになった。ブリュッセル(訳注:欧州委員会)に制裁措置の可能性を提示された後、2013年8月28日にようやく、EUの犯罪人引渡法を全面的に適用することに同意した。

クロアチアがEU法の履行に抵抗していることで、欧州委員会は以前から憤りを示していた。EUに加盟する7月1日のわずか数日前に犯罪人引渡法を改変したことを受け、司法担当のビビアン・レディング委員は、クロアチア政府はそのつけを払うことになるだろうと警告した。クロアチアでは、直前に改定されたこの引渡法のことを、俗に「ペルコビッチ法」と呼ぶ。この法律によって当局は、1983年にある反体制派クロアチア人をドイツで暗殺した容疑者の元スパイ、ヨシップ・ペルコビッチを引き渡さずに済むからである。

EU加盟の直前にクロアチア政府が犯罪人引渡法を改定したのは、ペルコビッチの身柄をドイツに引渡すことを阻止するため、と推測されている。グローバルボイスが以前報じたように、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はクロアチアへの加盟前日の公式訪問を中止した。

しかしクロアチア現野党側は、メルケル首相の訪問中止の理由[hr]は他にもあると見て、今回の法改正を例にあげている。それはヨーロッパ逮捕令状に制限期日を設けることを目的としたもので、施行された場合、ドイツは旧ユーゴスラビア国家保安庁のスパイ、ヨシップ・ペルコビッチの身柄引取りが不可能になるだろう。彼は殺人犯として手配中だが、クロアチア在住である。

欧州委員会は、引き続きクロアチアを監視下に置くことや、新規加盟国のEU資金利用開始を保留のままにすることもできる。その場合、シェンゲン協定(訳注:ビザなしで国境を越えられる協定)への加盟は遅れることになる。

 欧州委員会(ブリュッセル)のレディング副委員長(司法・基本的権利・市民権担当) 写真提供:世界経済フォーラム(2013年1月スイス、ダボス) Creative Commons 2.0 licenseの下で使用

欧州委員会(ブリュッセル)のレディング副委員長(司法・基本的権利・市民権担当)
写真提供:世界経済フォーラム(2013年1月スイス、ダボス) Creative Commons 2.0 licenseの下で使用

クロアチアは、8月23日までに法律を廃止するという期限を、守ることができなかった。その直後、レディング司法担当委員の広報担当は、クロアチアの選択について欧州委員会の「深い遺憾の意」を表明した。

近年のヨーロッパ情勢や歴史、そして地政学に興味を持つ人々は、ソーシャルネットワーク上で即座に関心を示し、自身の意見を述べた。そのほとんどが落胆を表すものだった。海軍大学校の教授、そしてボストン大学のシニア研究員であるジョン・シンドラー教授は自身のツイッターで次のように述べている。

怒りを顕にした委員会からの声明の後、クロアチアのゾラン・ミラノヴィッチ首相はブリュッセルに送った書簡を公表した。欧州委員会マヌエル・バローゾ委員長あてに送られたこの書簡は政府のウェブサイト上で公表され、次のように述べられている。

政府を代表して、法務大臣が申しあげます。クロアチアは、加盟に向けた会談で承認済みのEU法に則り、司法協力のための法律導入に必要な対策をとります。[…] クロアチアは今まで常に義務を果たしてきましたし、今後もそのつもりです。

クロアチアのOrsat Miljenić法務大臣がメディアに認めたところでは、法務省はヨーロッパ逮捕令状(EAW)の適用について、欧州委員会のビビアン・レディング司法担当委員に書簡を送っている。

クロアチア共和国政府は、その書簡を公式ツイッター上で公表した

クロアチア政府代表より欧州委員会バローゾ委員長への書簡 http://t.co/vdRMyHXlJw #EU #croatiaEU

レディング副委員長のスポークスマン、ミーナ・アンドレ―ヴァ氏は、副委員長が7月に送った欧州連合の懸念点に対して、クロアチア政府が答えを出したことを認めた。

クロアチア法務省から送られたこの書簡には「これら懸念点について、建設的に取り組む姿勢が表れていた」とアンドレ―ヴァ氏は記者会見で述べた。

彼女によるとクロアチア当局は、EU法に「則って」ヨーロッパ逮捕令状を履行する法律を導入することを示唆したという。アンドレ―ヴァ氏によると、欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長も、クロアチアのゾラン・ミラノヴィッチ首相より「同様の確約」を受けている。

「このような積極的な姿勢を委員会は歓迎しています」と彼女は述べた。「欧州委員会はクロアチア当局に接触して、彼らの意図を明確にしているところです。」

校正:Yuko Aoyagi

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