東京で同性愛に前向きな取り組み、社会の反応は

東京プライドパレードの様子。FlickrユーザーのDavid Martín Clavoにより2011年に撮影されたもの。

東京プライドパレードの様子。FlickrユーザーのDavid Martín Clavoにより2011年に撮影されたもの。CC BY-NC-SA 2.0

東京都渋谷区は、同性のカップルから申請があった場合、「結婚に相当する関係である」と認める証明書を発行するという条例案を、3月の区議会で提出すると決定した。

これまで日本には、同性同士をパートナーとして認める制度は存在しなかった。この条例が可決された場合、全国で初のケースとなる。

名称は「区 男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例案」。証明書は「パートナーシップ証明書」と名付けられ、渋谷区に住む20歳以上の同性カップルから希望があった場合に発行されることになる。

渋谷区がこの動きに乗り出した背景には、同性カップルがアパートの入居や病院での面会を希望した場合、「家族ではない」と断られるケースが多いことが挙げられる。

日本国憲法第24条では、婚姻について「両性の合意のみに基づいて成立」すると定めている。これは戦前の大日本帝国憲法のもと、またそれ以前の時代においては、婚姻には家長の同意が必要と定められており、血統存続のために親が婚姻相手を決めてしまうことが非常に多かった。結婚後に何かの問題が起きても、女性側から婚姻を解消する権利がなかったため、男女平等の観点から、新しい憲法には「両性の合意のみに基づいて」という文言が加えられた。

憲法のこの文言により、今回提出される渋谷区の条例案は「憲法違反」かどうかが論点の一つになる可能性があり、現在でもそれを理由にこの条例案を疑問視する人もいる。

そんな中、渋谷区の動きに続き、世田谷区も同様に同性パートナーシップを保障する具体的な施策を検討することを発表した。同区が後援するLGBT成人式において明らかにされたものだ。

世田谷区長の保坂展人(@hosakanobuto)は、昨年9月の区議会で同性カップルに対する支援策についての議論があったことを明かす。

保坂はLGBT成人式にて毎年祝辞を述べるなど、セクシャルマイノリティの権利を守ることに前向きな姿勢を示しており、参加者からの感謝の声も聞かれる。

昨年9月の議論は、自らもトランスジェンダーでありLGBTなど社会的弱者とされる人々のために尽力してきた上川あや区議(@KamikawaAya)の質問に答える形だった。上川は「性同一性障害」であることを公表し2003年に当選。その後2012年に渋谷区議会でLGBTの権利保護に関する質問があったことを知り、昨年9月に自身の所属する世田谷区の区長である保坂に同性カップルを「何らかの形で認めてほしい」と呼びかけた。保坂はこれに対し、前向きな回答をしたという。

昨今では、「東京レインボープライド」なども注目を集めることが増えたが、参加者からは「日本ではセクシャルマイノリティや同性愛を話題にすらしない」という声も聞かれるなど、日本全体におけるLGBTや同性愛に対する関心はまだ低いのが現状である。

そのため、今回の渋谷区と世田谷区の提案はネット上で大きな話題となっており、中にはすでに「同性婚」や「パートナーシップ証明書」が認可されたと思っている人がかなり多い。

ネット上の反応は賛否両論にわかれているが、渋谷区や世田谷区の行動を評価する声が多く上がっている。

同時に、反対派の意見もはっきりと表れている。

反対ではないにしろ、感覚的に嫌悪感を示すツイートも多い。

賛成・反対の意思表示は自由だが、正当な理由のない感覚的な反対意見に対しては批判が上がっている。

中には、今回の条例案が可決されれば、現在でも深刻な問題になっている少子化を助長することになるという意見も見られる。
しかし少子化は(異性婚のみ認められている)現在までで問題になってきたことであり、同性愛と何の関係もないことを冷静に指摘する声も多い。

以下のツイートからは、多くの人々が世代による価値観の違いを体感したことや、家族など自分と近い人々の偏見に満ちた考えに触れたことにより、ショックを受けていることがわかる。

このように同性愛をめぐって家庭内の価値観の違いにぶつかる例は、今回の条例案が話題になる前からあったようだ。以下の2人のユーザーは昨年の時点で、同じような状況に直面したことを訴えていた。

近い人々が持つ偏見を知り、それらを見聞きしたことが原因でさらに肩身の狭い思いをする人々が増えることを危惧するユーザーもいる。

あるユーザーは鴨を例に挙げ、外見に大きな違いがなければ性別は問題にならないかもしれないと、より広い視野を持った考え方を提案する。

今回の条例案に対するツイートを見てみると、何か特別な理由からというよりも「気持ち悪い」という感覚的な意見が多いことがわかる。

そんな現在の世間の反応に失望しつつも、今後渋谷区や世田谷区のような事例が広がることにより、日本全体の受け入れ方も変化することを願う声も上がる。

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