必見! SXSW音楽祭参加のパキスタン・ミュージック7曲

「初日、イスラマバード空港にて。僕らはこれから世界最大級の音楽祭に出場しに行く。テキサス州オースティンで開かれる、サウス・バイ・サウスウエスト、SXSWフェスティバルさ!」 クムアリヤン公式フェイスブックページの投稿より

「初日、イスラマバード空港にて。僕らはこれから世界最大級の音楽祭に出場しに行く。テキサス州オースティンで開かれる、サウス・バイ・サウスウエスト、SXSWフェスティバルさ!」 クムアリヤン公式フェイスブックページの投稿より

SXSW音楽祭は、規模も影響力も世界最大級である。そのSXSWで今年初めて、パキスタン音楽を特集したショーケース・ライブ(訳注:音楽業界向けにプロモーションするイベント)が3月18日に開催される(訳注:原文公開日は3月17日)。

音楽ファンがトランスミュージックやインディーロック、プログレやジャズについて思い浮かべるとき、パキスタンをイメージする人はほとんどいない。しかし、SXSWでパキスタンのショーケース・ライブに来た観客は、まさしくそれを目の当たりにするだろう。それぞれ全く違った6組の演奏に、豊かで多様だがあまり知られていなかった、パキスタンのミュージックシーンをかいま見ることができる。

ショーケース・ライブ以外にも、パキスタン人ラッパーのアディル・オマルが3月19日にSXSWで演奏する。

パキスタンの音楽産業はいまだ遅れている。ほとんどのミュージシャンはアーティストと起業家を兼ねていて、音楽制作・販売のあらゆることを、創作活動から経理・マーケティングまで、全て自分で取り仕切っている。知的所有権が保護されないことも悩みのたねだ。2007年以降、この国ではいつ爆破事件が起きてもおかしくないため、ライブコンサートもあまり開催されなくなってきた。

そこで、オースティンでのショーケース・ライブは、パキスタンから飛んできて生演奏するこの6組のアーティストにとって、絶好のチャンスなのだ。このショーケース・ライブが実現したのは、米国政府と、「Face」というNPOとの資金提供による。Faceはイスラマバードを拠点に、コンサートの企画やパキスタン音楽のプロモーションを行なっている団体である。彼らアーティストは、演奏してもSXSWから報酬をもらうことはないが、SXSW内のどのイベントにも無料で参加することができる。

今年のSXSWで演奏するパキスタンのアーティストは次の通り。

ミカール・ハサン・バンド(Mekaal Hasan Band)

MHBは南アジアのスーフィー教の詩に基づいたプログレやジャズを演奏するバンドだ。リードギタリストのミカール・ハサンは2年前、ビザ取得の困難を乗り越え、インドのミュージシャンとのコラボをやってのけた。そして昨年、インドとパキスタンのコラボ第一弾となるアルバムをリリースした。この動画はアルバム『Andholan』より「Ghunghat」、インドのグジャラート州バローダ市でのライブ演奏である。

プア・リッチ・ボーイ(Poor Rich Boy)

ラホールを拠点にしたインディーロックのアングラなバンドで、英語の歌詞でパキスタンの社会や政治の状況を歌う。パキスタンで人口の最も多いパンジャーブ州の州都で結成された。最近、メンバーの1人が日刊紙Dawnのインタビューに答え「海外で演奏するとパキスタンのミュージシャンにも箔がつくよ」と言っている。この動画は3月にリリースされ、Piphany ProductionsによりVimeo上にアップロードされた。

マイ・ダーイ(Mai Dhai)

伝統民謡集団マンガニャールの歌手で、南西部シンド州にあるタール砂漠の玄関口、ウマルコート出身。去年の夏には、彼女は都会のミュージシャンとジャムセッションをして、「インターネットに向けた何か美しいもの」を制作した。

クムアリヤン(Khumariyaan)

民族楽器の枠を超えたインスト・ジャム・バンドで、北西部カイバル・パクトゥンクワ州ペシャワールで結成。クムアリヤンの音楽はメンバー各自の出身地のサウンドの融合であり、打楽器、弦楽器ラバーブ 、絶滅の危機に瀕(ひん)したパシュトー独特の楽器「zeer baghali」、それに西洋のギターで編成されている。

サイン・タンビール兄弟(Sain Tanveer Brothers)

パンジャビ太鼓「ドール」の名手、タンビール兄弟は、 シアルコット近くの小さな町ダスカで育った。婚礼の行列やスーフィー寺院の儀式に、ドールの演奏は欠かせない。サイン・タンビールの「ドール・スピニング 」の技は有名で、ラホールのスーフィー寺院シャー・ジャマール廟で演奏された時は数千人を魅了した。4張りのドールを一度に首の周囲に下げ、くるくる回転しながら演奏する、といった技である。

この動画を投稿したファズリ(Zeejah Fazli)は、イスラマバード拠点のギタリストで、オースティンでは彼らと共演する。ファズリは、今回のイベントを後援している団体、Faceの運営者でもある。

ハルーン(Haroon)

1990年代にAwaazというバンドの一員として有名だった人気歌手。最近彼は、女性スーパーヒーローのTVアニメ番組「ブルカ・アベンジャー」で文化的活動家に転身を遂げた。ハルーンはこのシリーズの企画・制作を担当している。こちらはシリーズ主題歌で、ハルーンとパキスタン人ラッパーのアディル・オマルが歌っている。

アディル・オマル(Adil Omar)

この23歳のラッパーもSXSWに出演するが、Face後援のショーケース・ライブには参加せず、3月19日the Trophy Clubにて演奏する。この動画は昨日(訳注:3月15日)リリースされたもの。

今回のショーケース・ライブが実現した経緯

パキスタンにはたくさんの言語やサブカルチャーがあるが、地方のミュージシャンが別の地方の音楽に触れる機会はめったにない。Faceの活動目的のひとつは、パキスタン国内の異なる背景や文化を持つミュージシャン同士を結び付けることにある。

米国国務省機関誌の記事によると、在イスラマバード米国大使館のある文化担当官が2013年、SXSWの主催者らにパキスタンのショーケース・ライブ開催を熱心に持ちかけたのだという。

2014年には、その担当官ジェニファー・マクアンドリューが、SXSWのシニアプロデューサーを「ミュージック・メーラ」に招待した。ミュージック・メーラというのはイスラマバードで行われる巨大イベントで、米国大使館から5万5000ドルの補助金を得て、Faceが企画運営している。「ミュージック・メーラとSXSWとの長期的連携」を育みたい、と彼女は考えた。

メーラを観賞後、シニアプロデューサーのTodd Puckhaberはこう言った。「こうした演奏を目の当たりにした今では、確信を持って言える。アメリカは、そして世界は、パキスタン人の素晴らしい音楽の才能をぜひ体験すべきだ」。彼は翌年のSXSW音楽祭にミュージック・メーラのバンドを何組か招待するつもりだ、とも機関誌は伝えている。
SXSWのサイトによると、2015年SXSWに出演を希望するミュージシャンは誰でも、ネット上の申込フォームに記入の上、2段階の厳正な審査を通過しなければならない。
SXSW has a committee of people who listen to and grade recordings according to originality, technical ability, songwriting skills, career establishment, and overall artistry. Every application is graded at least twice, then those with the highest scores are reviewed further and invitations are extended.

SXSWには審査委員会があり、録音されたものを委員が聞いて評価する。独創性、演奏技術、作曲スキル、これまでの実績、総合的芸術性が評価基準になる。全応募者を最低2回評価した後、最高得点だった応募者についてさらに再検討し、招待が贈られる。

2014年SXSWには2万8千人以上の音楽業界関係者やミュージシャンが出席し、57か国を代表する2300の演奏が行われた。

2015年SXSWのパキスタンのショーケース・ライブ のメインは、2015年3月18日(水)午後8時より、テキサス州オースティン、ブラゾス通り604、ドリスキルホテルのビクトリアン・ルームにて行なわれる。

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