福井大学がキャンパス内の猫の世話を禁止、猫たちの未来は

 Pongo and Sebastian, two cats Charles Januzzi rescued and now live with him at home. Photo courtesy Charles Januzzi.

ポンゴとセバスチャン。ジャヌッツイ氏が保護、飼育している。写真提供:チャールズ・ジャヌッツイ 著作権及びその他の権利はすべてチャールズ・ジャヌッツイに帰属しています。

チャールズ・ジャヌッツイ氏は25年間、彼が勤める大学敷地内に暮らす野良猫の繁殖抑制に取り組んできた。しかし現在、大学側との対立を余儀なくされている。

キャンパス内にいる野良猫への餌やりやその他の世話の一切が禁じられたため、ジャヌッツイ氏はインターネット署名を開始した。その名も「To University of Fukui: Stop starving the cats who live on campus 福井大学に対する嘆願書:キャンパス内の猫を飢えさせるのは止めてください!」、4月24日の時点で2,300以上の署名が集まっている。

ジャヌッツイ氏は、福井大学文京キャンパスで長年准教授を務めてきた。

ペンシルバニア出身のジャヌッツイ氏、「野良猫の世話は子供の時からしていました。福井に来てからもすぐ世話を始めました。周辺には見捨てられた野良猫だらけでしたから。」

彼はTNRと呼ばれる、野良猫を捕獲(Trap)して去勢(Neuter)を施した後、元の場所に戻す(Release)活動を実践している。その目的は、長期的な視点から野良猫の数を抑制するためだ。

「私はこの半年間で、大学内と大学のすぐ南東の方に暮らしているすべての猫にTNRを施しました。しかしTNRが必要な猫はまだ3匹います。」

「そもそも猫が増えすぎてしまったのは、大学関係者がTNRもせずに猫たちを餌付けしたからです。皮肉にも、それが私の活動のきっかけになったわけです。」と、ジャヌッツイ氏は語った。

さらに、「大学側は現在、キャンパス内での猫の餌付けを一切禁じ、私にも活動をすべて止めるように言い渡しました。ですが餌やりを始めたのも、大学関係者がそれを中途半端に投げ出してしまったからです。TNRだってあと少しで完了するのです。」

このように地方のあちこちに野良猫が多く住みついてしまった問題の一因として、日本のペットビジネスが巨大化したことが挙げられる。

Japan Todayの記者、ジェシカ・コヅカによると、

The number of pets in Japan (is about) 21.3 million, far exceeding the number of children under 15 in the country. About 35% of households have a pet and many of them live lives of luxury as pampered members of the family, with Japanese spending about 3.8 trillion yen a year to keep them happy.

現在日本国内におけるペットの数は2,130万ほど。15歳以下の子供の人口をはるかに上回る数だ。約35%の家庭が何かしらペットを飼っていて、その多くが家族と同じくらい贅沢な暮しをさせている。年間で3.8兆円ほどがペットにつぎこまれているという事実だ。

今やペットを飼うことは日本で当たり前となっている一方で、飼い主としての責任をしっかり理解しないままに猫を購入する人の多さをジャヌッツイ氏は指摘している。

「猫や犬を大学に捨てるのは、誰かに拾ってもらいたいと考える人たちです。たとえば、大学の周辺に下宿している学生で、拾った子猫をこっそりと飼ったものの、成長して発情期を迎えた猫の習性にうんざりしてしまった、または大家に見つかり処分してくるように言われてしまったケースです。」

また別の例は、飼い主の老人が亡くなったり老人ホームに入れられたりした場合だ。

ジャヌッツイ氏によると、「身内が猫を大学に捨てるのでしょう。ほかよりも捨てやすい場所だからです。壊れたテレビや使わなくなったタイヤを投げ捨てるように、彼らは飼い猫をいとも簡単に捨ててしまうのです。」

日本で捨てられるペットが増えてしまった重要な要因として、未然防止策である画期的なTNRよりも、ガスによる安楽死が数をコントロールするために使われていることにある。

「保健所に連れて行ってガス室送りにさせるよりも、大学に捨てた方がマシと考えたのでしょう。」とジャヌッツイ氏は推測している。

ところが日本でもTNRの方が動物の数を抑制するには効果的だと実証した地域がある。

神戸とその周辺地域は1995年に大震災に見舞われた。そのせいで住処を失ったペットたちが、壊滅的な状況となった被災地をあてもなくさまよっていたという。

飼い主のいなくなった無数のペット、それに加えてTNRへの認識や援助が希薄だったこともあり、神戸では10年あまりで野生化したペットが爆発的に増加してしまった。

そこでアニマルレスキューシステム基金は、2006年、神戸市に不妊去勢専門クリニックを開設した。その後6年で、同市では捕獲されガス室行きとなった子猫の数は激減している。

果たして福井大学の野良猫たちはどうなってしまうのか。チャーズ氏は、これまでしてきたTNRの努力が水の泡となってしまうと声を大にした。また今回の禁止命令が、大学が正式に発表した方針ではないことにも眉をひそめている。

こうして彼がAvaazにて始めた署名は、目標の2,500人まであともう少しのところだ。
(訳者注記:5月30日現在、署名は2,500人を超え3,000人を目標にしている)

チャールズ氏の努力を認めている人もいる。香取章子氏は日本の動物を取り巻く問題を扱うフリージャーナリストで、今回の問題については以下のような見解を述べた。

福井大学がキャンパス内の猫たちの不妊・去勢手術も餌やりも止めさせ、飢えさせようとしているとは! キャンパス内での地域猫活動は時代の流れ。これに逆行するようなことを主張するとはナンセンスです。北陸新幹線が開通してこれから発展しようという福井県のイメージダウンにもつながると思います。

校正:Yuri Yoshinori

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