ハンガリー:今も進行中のもう1つの環境破壊

この本文の一部は、Atlatszo.hu上に公表されたものである。

2010年10月、コロンタールの赤泥貯水池から有害物質が流出し、近年のハンガリー史上最悪の環境災害を引き起こした。有害な泥水が近隣の村々に流れ込み、住民10人が死亡、多数が負傷した。住民たちは、氾濫の危険が迫っていることを知らされていなかった。

 


首都ブダペストから西に150km離れた町デヴェチェルはアルミナ工場から流出した有害泥の洪水に見舞われ、その町の住民たちは懸命に家財品を泥の中から回収していた。 撮影 Y ATTILA BOGART P.  © Demotix (6/10/10).

首都ブダペストから西に150km離れた町デヴェチェルはアルミナ工場から流出した有害泥の洪水に見舞われ、その町の住民たちは懸命に家財品を泥の中から回収していた。 撮影 Y ATTILA BOGART P. © Demotix (6/10/10).

ハンガリーには、2010年の大惨事の原因となったアルミナ生産廃棄物汚泥貯水池と同様の貯水池で、アルミナ生産終了後、別の種類の有害廃棄物を投棄するために使われたものや、今も使われているものがある。ハンガリーのアルミニウム工場は1990年以降、民営化された。買収者は都合よく低価格で買収したその代わりに、それまでの環境被害の縮小を引き受けなければならなかった。

このような工場の一つが、ハンガリー北西のドナウ川近くの町アルマスフュズィトにある。ここでは長期間にわたりアルミナの生産は取りやめられているが、その汚泥貯水池は、他の場所で生産された有害廃棄物投棄のために使われている。

Atlatzo.huが公表した[.pdf, hu]文書によると、15年前、Tatai Környezetvédelmi Zrt.(タタ環境保護cPlc.、別名TKV Zrt.)のスタッフメンバーの一人が、ハンガリーのアルミナ生産廃棄物汚泥貯水池の一つ(アルマスフュズィトの貯水池)の「整備」に使う技術について大学で講義を行い、その中でこれを「我々は、既存のリスクを別のリスクに取り替えているのだ。」と主張した。

講義では、こうも付け加えられた。「この地域をきれいにするには、11,000トンもの大量の廃棄物すべてをここから取り除く以外に方法がない。」

文書には、その講義が記録されており、「被害を減らす」という口実のもとに、これらの貯水池が、有害廃棄物や、専門会社が投棄した重金属によってまで汚染されたことを明らかにしている。これによってもたらされる結果は予測不可能だが、その利益は莫大なものになり得る。

ハンガリーのブロガーOlajosは、2010年の投稿[hu] で、2000年の有害廃棄物についての文書でさえ、アルミナの生産により14.45パーセントの工業 ダイオキシンフランが生成されたと述べている。

[…]ダイオキシンとは何か?過去数年のウクライナの政治に関心を持っていた人なら、 (2004年の選挙における大統領候補者の1人Victor Yushchenko)が当時ダイオキシンの毒を盛られたことで、その名前を聞いたことがあるだろう

ダイオキシンは正式には、テトラクロロジベンゾ・パラ・ダイオキシン(TCDD)という。これは、自然界には存在しない化合物であり、人類の工業活動により副産され、免疫システムを乱し、癌を引き起こす。また、DNAを損傷させる恐れがある。長期的にも短期的にも、潜行性の毒物であり、体内から完全に取り 除くことはできない。ダイオキシンを含む副産物は、工場から環境中に放出される。ハンガリーにおいては、環境破壊のシンボルともなったGareの廃棄物貯水池からダイオキシンが放出された。

フランについて知る人はもっと少ないだろう。この化合物は、ダイオキシンほど有名にならなかったが、これも同様に、アルミナ生産により生成される副産物で環境を汚染するものである。[…]

2011年末までに、グリーンピースは、ハンガリーにおいてアルマスフュズィトの貯水池に注目を集めるためのキャンペーンを始めた。Pacskerは Greenrブログに「アルマスフュズィトのがん患者通り」[hu]というタイトルのグリーンピースのビデオを共有し、それに対するコメントを掲載した[hu]。

エトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)の環境科学共同研究センター(CRCES)が、グリーンピースのビデオに登場し語るのは、非常に深刻な事例があるからに違いない。アルマスフュズィトの例がそうだ。

Judit Molnar (ビデオの中で語っている若い女性)は24歳だが、腫瘍形成疾患を2回経験し、彼女の姉(または妹)は、体内に19の悪性腫瘍を抱えている。

土壌に染みこんだ油は、地下1.5メートルまで達している。

赤泥は、貯水池に投棄されたその他の物質に比べればささいなものだ。

カエルは赤色(貯水池から漏れ出た液体のせいで)。

貯水池には、多くの漏れが見つかっている。[貯水池のすぐ横を流れるドナウ川の]干潮によりこれがはっきりと証明された。ブダペスト全体がこれらの工業毒物と発がん性副産物を飲んでいるのだ!

これに加えて、タタ環境保護(原文のまま!)cPlc.は、これを単に「コンポスト化」と称してさえいる。いったいどうやって、無機廃棄物から堆肥を作れるというのだ!?

スポンジのように漏れ出す貯水池に有害廃棄物を流し込んでいるのだ。ドイツとオーストリアでは、異種類の有害廃棄物を混合したり、それらを一緒に保管することは禁止されている。[一方、]われわれは故意に環境の火薬樽を作っているようなものだ…。

1996年の講義の記録を公表してから、TKV Zrt.は、atlatszo.huに接触し、上述の文書は改ざんされており、アルマスフュズィトの赤泥貯水池は環境に対して全く危険ではないということ を、特に主張してきた。しかし、2004年にハンガリー科学アカデミーの地理学研究所が発表した 論文[hu,英語の要約付き]は、Atlatszo.hu が公表した文書が述べた事実を支持している。

校正:Yukari Sugimoto

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