パキスタン:少数民族ハザラ人、襲撃される

紛争中のバロチスタンの首都クエッタは2012年4月14の土曜日、15日の日曜日と2日間にわたり閉鎖された。今回の抗議は、バローチ人の分離主義者たちではなく、シーア派の少数民族ハザラ人が起こしたものだ。

近年、バロチスタンにおいてハザラ人をターゲットとした暴力行為が増加している。ここ9日間で30人のハザラ人が殺された。宗教活動を禁じられている分派の武装組織 Lashkar-e-Jhangviが直近の襲撃を実行したと認めている。昨年Lashkar-e-Jhangviは2012年までにパキスタンを去るようハザラ人を脅す内容のパンフレットを配っている。

The Hazara members were travelling by bus before the shooting attack occurred in Quetta. Image by RFE/RL RFE/RL, copyright Demotix (04/10/12).

クエッタでの襲撃の直前。バスで移動するハザラ人            写真提供:RFE/RL RFE/RL
 著作権:Demotix (2012年4月10日)

ブログHazara Peopleにはこのようにある。

この虐殺は、国際社会がハザラ人迫害に対し完全に沈黙し、無関心を決め込んでいる状況で計画的に起こったものだ。現在パキスタンには60万人以上のハザラ人が暮らしている。ハザラ人は統治者アミール・アブドゥル・ラフマン・ハーンの治世下で迫害され、1880年代にアフガニスタンからパキスタンへ移住してきた。

ハザラ人を公然と攻撃している武装集団に対し、権力者たちはなぜ措置を取らないのだろうか?ジャーナリストで、ブロガーでもある、Amir Saeedはat Guppu.comでこのように答えている。

バロチスタンは血まみれだ。犯罪者の刑が問われることが一切ないまま、ハザラ民族の虐殺が続く一方で、政府、州レベルの双方で権力の回廊に不気味な沈黙が訪れているのは興味深い。おそらく、ハザラ人の権利を主張し、地方で野外演習をしている過激派や偏屈者たちから守ることは、政界のお偉いさん方の議題にはないのだろう。安全保障体制の役割も疑わしいが、幸運にも彼らは政府の支配下にある。

バローチ人ジャーナリストでブロガーのMalik Siraj Akbarも Lashkar-e-Jhangvi に対して、パキスタン当局が処置を講じないことを非難している。

パキスタンの安全保障体制がLashkar-e-Jhangviなどのスンニ派原理主義者を内々に保護している限り、ハザラ民族の迫害は近い未来に終わることはないだろう。パキスタン当局とテロリスト集団の間で接触があるという証拠はたくさんある。さらに、立法、司法、そして政府の上層機関は、国政の議論上でハザラ人たちの苦境を取り上げてさえいない。

Rafia Zakariaは自身の記事の中で、現状をハザラ人の暗い春と例えている。 国際社会はバローチ人の分離主義者の動きしか知らず、ハザラ人は火とフライパンの 間に捕えらえているようなものだ、と。

バロチスタンにいるシーア派のハザラ人たちは、パキスタン憲法のもとからの、独立ではなく権利を求めている。地元住民からの同情はほとんどなく、総じて世界の人々は、世界が平和だと信じこんでいるというこの状況が重なって、正義だけでなく、希望さえも持てない情景が作り出されている。

土曜日(4月14日。ハザラ人による抗議デモが実施された日[訳注])、ツイッター上では#ShiaGenocide、#Hazara、#Quettaなどのトピックがトレンドになった。主な議論は、シーア派のハザラ人が殺害された事件を「シーア派殺害」それとも「ハザラ人殺害」と呼ぶべきか、というものだった。

@Hazarapatriot (Ali Hazara): なんて悲しいことなんだ―これをシーア派殺害と呼ぶか、ハザラ人殺害と呼ぶかを 議論しているなんて。犠牲者の家族に、そんなことが問題になるのかどうか、聞いてみたら。

@Baqwaas (Baysharam):これはシーア派の大虐殺でもスンニ派の大虐殺でもない。これは人間が引き起こした大虐殺だ。

@Chiltan (salma jafar): クエッタのシーア派殺害に対して、民族的な色眼鏡を通して判断している人たち、恥を知れ。何百人ものバローチ人が逮捕され、犠牲者になっているんだぞ。

多くのツイートが殺戮をとがめ、右翼のスンニ派に属す宗教集団を非難した。

@alisalmanalvi (Ali Salman Alvi): シーア派ムスリムに対する残虐行為は、一部の地域に限ったことではない。いくつかのモスクでは、シーア派、アフマディ派、その他の少数派に対して、悪意をふりまいている。

第一線で活躍するハザラ人の活動家M. Saleem Javedはこのようにツイートしている。

@mSaleemJavedハザラ人の抗議者:我々は、反タリバンだ。ハザラ人が一人も生き残らなかったとしても、これからもずっと反タリバンであり続ける。

 

Hazara protests. Image by author

抗議するハザラ人(著者撮影)

ハザラ民族による全国的な抗議デモが週末を通して実施されたが、主流のテレビ局やラジオはこの問題を大々的には取り上げなかった。ほかの社会的集団からの、デモへの参加はほとんどなかった。

@beenasarwar (beena sarwar): 平和的に抗議活動を行っているのを見ないふりをしている、ということは、ヘッドラインに取り上げてほしければ、暴力的で、派手にやれ、というメッセージを送り返しているんだ。

@Razarumi (Raza Rumi): ‏主要メディアは、ギルギット、チラス、カラチ、クエッタで、シーア派殺害に対する抗議デモに参加した何千人ものシーア派の人々を映すことはなかった。

ツイッターで発言するバローチ人は、パンジャブ州が沈黙していることを非難している。

@BalaachMarri (TheBaloch): パンジャブ人のニュースキャスターはツイッターであっさりと事実を報道するにとどまった。テロリストの襲撃を非難しているが、襲撃者については話したくなさそうだ。

@gedrosian (Gedrosia):バロチスタンは戦争の真っただ中だというのに、パキスタンは開催中のファッションウイークの話題でもちきりだ。

校正:Kazumi Miyamori

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