マリ:渦中の審判判定に対するサッカーファンの反応

ワールドカップに審判判定の論争は付き物である。2010年のワールドカップでいまのところ印象的なのは、マリ人審判コマン・クリバリがアメリカの選手エドゥのゴールを認めなかった件だろう。このゴールが認められれば、アメリカはスロヴェニアから奪った2ゴールからさらなる返り咲きをすることができたはずだった。試合終了のホイッスルが鳴ると同時に、掲示板で、またはフェイスブック上でクリバリ審判のワールドカップへのさらなる参加のとりやめを要請するページを127件も作成したり同審判のウィキペディアの項目に批判を書き込むなどしてブロガーたちは怒りを表明した。ブロガーたちだけでなく、ジャーナリストたちもクリバリの判定が問題になったのはこれが初めてではないことを指摘し、参戦した。

あの有名なスポーツ雑誌Sports Illustratedの記者ピーター・キングも、ただちに次のようなポストをツイッターで更新した

“Putting a ref from a small African country in charge of a vital WC game is like a Mid-American Conference ref doing the Super Bowl.”

アフリカの小国の審判に重要なワールドカップの判定を任せるなんて、スーパーボウルをMAC(訳注:Mid-American Conference: 全米大学体育協会に属するいくつかのスポーツチームで構成されるリーグ)の審判に任せるようなものだ。

さらに自身の記事の中でも、FIFAを「無能な人間に好き勝手に審判させている」として非難する気持ちを表している。

クリバリ氏の失格を求めるフェイスブック上のページの写真

それでも、この問題が起こる以前にはクリバリ氏は、ただ一人のマリからの参加者、そしてアフリカ大陸からのたった4人の審判の一人として母国の誇りであった。この試合前に書かれたMaliwebのクリバリ氏についての記事のコメント欄には多くのブロガーが応援や願いを込めた言葉を書き連ねていた。例えば、Bass Juniorはつぎのようにコメントしている[fr]:

C'est un honneur pour le Mali.Bonne suite pour vous,petit coulibaly!

マリの誇りだ。がんばれ、クリバリさん!

Dahicoは次のようにコメントを付け加えている[fr]:

La reussite est au bout de l'effort personnel. Si le travail bien fait annobli l'homme, alors je dirai que Komas l'est deja. Bonne chance cher compatriote et que Dieu t'assiste dans tes actions et surtout soit impartiel comme toujours.

成功とは個人の努力の末に生まれるものである。大きな成果が偉大な人間を生み出すのなら、コマンはすでに偉人だと言えるだろう。同胞に幸運を、そして神はいかなるときもあなたと共におられ、そしていつもそうであるように常に公平でいらっしゃる。
マリ人審判 コマン・クリバリ

マリ人審判 コマン・クリバリ

しかし、この試合後、アフリカのブロガーもクリバリ審判の判定を理解しがたいようだ。掲示板Senewebで、ある匿名の投稿者はワールドカップでの「審判はもはや争点の一つである」と考えている[fr]:

les arbitres commencent à gâcher le tournoi avec des cartons stupides,but refusé et des décisions contestables. Je doute fort que les huitièmes de finale soient d'un niveau élevé car beaucoup de joueurs seront suspendus.

意味のないカード、ゴールの不認定、不確かな判定で審判たちが試合を台無しにしはじめている。多くの選手が出場できないため、ベスト8決定戦がハイレベルなものになるのか疑わしい。

もう一人の投稿者は以下のように書き込んでいる[fr]:

Ce type d'erreur ne se commet a pareil. Que la bourde de l'arbitre soit aux dépends des US, de la Grèce Antique, ou du Zimbabwe, n'est pas le cas. Le problème c'est qu'on est en coupe du monde et cet arbitre torpille les chances de toute une équipe. Imaginez la frustration de ces joueurs américains qui font tout pour faire reconnaitre le football par leurs compatriotes.

この種の間違いというのは、とにかく受け入れがたいものである。このヘマが、どの国にとって損害になるのか、アメリカかはたまた古代ギリシャであろうがジンバブエであろうが関係ない。問題は、これはワールドカップで起こっていて、この審判がチーム全体のチャンスをめちゃめちゃにしているということだ。自国でサッカーが認められるよう奮闘していたアメリカの選手たちの苛立ちを想像してみてもらいたい。

Loicはなぜ、このような判定がいまだにすぐに見直されないのか疑問に思っている[fr]:

A quand la vidéo? Le seul argument qu'on nous oppose est un insupportable droit a l'erreur, un facteur humain qui entraine des “faits de jeux” d'autant plus iniques qu'ils sanctionnent ici une équipe méritante.

この瞬間の映像はいつになったら出るのだろう?ここでの唯一の議論というのは耐え難い、試合に必ずつきまとう「人為的ミス」である。正当なチームが犠牲になっているとき、それはより一層不公平である。

読者の一人が書いているように、大きな間違いを犯した審判がアフリカ人だったのは残念なことである。ある投稿者はこのように反応している[fr]:

Comme si les africains n'avaient pas droit à l'erreur!

アフリカ人は間違いを絶対に犯してはいけないのか?

たった一つの不確かな判定に対して反応が過剰すぎると思っている人たちもいる。Daanii NLe Mondeのコメント欄で判定について説明を試みている[fr]:

Je trouve que tout le monde exagère en ce qui concerne la décision de l'arbitre. Au moment où il a sifflé, plusieurs joueurs slovènes et américains se bousculaient et se tenaient les uns les autres. Souvent, dans des situations comme celle-là, l'arbitres siffle pour l'équipe qui se défend. Le seul hic ici c'était, qu'une seconde après, les Américains ont marqué le but

この審判判定の件は大げさにされているように思う。審判が笛を吹いたとき、何人かのスロヴェニアとアメリカの選手たちは取っ組み合ったり、つかみ合ったりしていた。このような状況下ではだいたい、審判は防御しているチームに有利になるように笛を吹くものだ。ここでの問題は、実は、アメリカの選手たちがゴールを決めたのはホイッスルが鳴った直後だったということだ。

アメリカ人視聴者たちの怒りは理解の範疇にあり正当化されうるものだが、アフリカのブロガーたちはメディアでのクリバリ氏の扱いに満足しているわけでもない。
Sean MurphyAfricafeed上で、ピーター・キングのクリバリ氏とマリの評価に憤りを表している

“And putting @SI_PeterKing at the helm of a twitter account is like erm, putting 2 Black Hawk helicopters into downtown Mogadishu, or was that an “unfortunate” analogy?

じゃあ、@SI_Peterkingをツイッターのアカウントのトップに載せるのは、2機のブラックホークのヘリコプターをモガディシュの街に降り立たせるようなものだろうか、それともこれは「ちぐはぐな」たとえだろうか?(訳注:ブラックホークは、強襲・戦闘用ヘリコプター。ここでは、1993年のモガディシュの戦闘を引き合いに出している)

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