中国のウェブユーザー、仲間と共に「Lantern」を灯し検閲回避の道へ

厳重に検閲されている中国のウェブでは、ユーザーの多くがFacebookやYouTubeといった禁止サイトにアクセスするためにバーチャルプライベートネットワーク(VPN)やプロキシサーバー(訳注:アクセス元を隠すために代理でアクセスするコンピュータ)を利用している。しかし、非営利のプロキシアクセスポイント(訳注: プロキシサーバーと同義)のほとんどは、中国政府にその存在が見つかった時点で閉鎖されてしまう。実際、中国のTor上にある公共アクセスポイントのほとんどは閉鎖されている[en]。Torとは、ユーザーの場所を匿秘化する広域のボランティアネットワークの一部である。

検閲に対する戦いに新たに参戦したのが、最近公開されたLantern(ランタン)と呼ばれる新しい検閲回避ソフトウェアだ。このソフトウェアはピアツーピア(P2P)技術(訳注: ネットワーク上のコンピュータ同士が直接通信し合う技術)を使い、ユーザーがインターネット上の友人を「信頼できるネットワーク」に招待できるようにする。そして、VPNまたは制限のないインターネットでアクセスしている同じネットワーク内のメンバーすなわち友人同士が、インターネット接続を共有できるようにする。この「信頼できるネットワーク」は広く分散して存在するので、政府が個々のアクセスポイントを発見することが困難となる。これまでのところ、中国国内のユーザーと通信が大多数を占めている。

この無償ソフトウェアの開発者等は、冒頭で紹介したようなビデオを公開し、プログラムがどのように役立つかを説明している。

ソフトウェア技術者のJian Alan Huangは、この新しいソフトウェアのユーザーについてツイッター上で友人に語っている。

#Lanternのユーザー数は10,000人に達した。およそ7,500人、つまり全体の75%は中国のユーザーだ。通信量を見ると、90%が中国からのものだ。私の推定では、1,500人の海外ユーザーが、中国ネット市民の検閲回避を手助けするために自分達のネットワークを提供している。
その他の地域のユーザーはわずか1,000人だ。

Alanは中国本土で友人たちにネットワークアクセスを提供するユーザーの1人だ。

私はネットワークの共有だけを目的に古いコンピュータを1台使おうと思っている。#Lanternを通して「壁」(訳注:中国政府によるインターネット検閲のこと)の向こう側にアクセスしたい人は、私をネットワークに加えてください。

たくさんのユーザーがこの新しいツールに対する評価を公開した。ChinaChange.orgの編集長Yaxue Caoは、#Lanternは政府による監視を無効にすることはできないと友人に念を押している。

Lanternはインターネット検閲の無効化を狙ったネットワークだ。これは友人同士が協力して「壁」をくぐり抜けるための新しいソフトウェアである。このソフトウェアをインストール・共有することで、グレート・ファイアウォール(訳注:中国政府によるインターネット検閲システムの通称)を越えて検閲された情報にアクセスすることができる。ただし、Lanternは開かれた扉を用意するだけで、政府の監視から守ってくれるものではない。監視を回避したいならば、Torを使う必要がある。

アメリカを拠点とする中国人活動家の@wenyunchaoは、幾つかの提案をしている。

国外IPアドレスからのアクセスがブロックされている中国本土の情報に国外からアクセスしたいユーザーもいるので、#Lanternは相互接続モードを提供してはどうか。そうすれば、より多くの国外ユーザーが中国国内の友人と通信しやすくなると思う。また、もし可能ならば、ユーザーがブロードバンド通信の優先権を設定できた方がよい。例えば、知人との通信にブロードバンドの30%を割り当てるよう選択できる、というように。

@zuihuluと@MyDFはなぜLanternを検閲回避ツールとして選んだかを説明した。
@zuihuluはLanternのソフトウェアアイコンがとても象徴的であることを挙げている。

私は二日間、このツールを試して見た。安定性と速度は商用のVPNやSSHほど良くはない。ただ、この冬はオンライン中、画面上のLanternの中に小さなキャンドルの光が灯っていて、なんだか温かい気持ちになる。

#Lanternの出現は検閲回避の歴史上最も心温まる出来事だ。このビデオがとても心に響く。インターフェースもおしゃれで、友人同士が連携しているのがわかる。このソフトウェアを使っている間、二つの大陸を跨いで弧が描かれる(友人同士のネットワーク)ので、この冬はもう寂しい気分になることはないだろう。

The program indicates to the user that they are connected to the network outside China. Image from Lantern.

ユーザーが中国国外のネットワークにつながっていることがわかる。画像はLanternより。

中国で最も人気のあるマイクロブロギングサイトのウェイボーでは、グレート・ファイアウォールの影響もあり、この新しいソフトウェアに関する議論はほとんど見られない。Ken Wanは言葉を慎重に選んで、友人にこの新しいツールをさりげなく紹介している[zh]。

介绍一个全新的网络项目Lantern(灯笼),这是Google Ideas资助的一个计划,旨在通过p2p信任网络实现突破xxx的努力。项目原理类似点对点下载,每一台安装了灯笼的解放区电脑都可以作为proxy帮助沦陷区电脑上网。灯笼的特色在于只有信任的朋友才能互相帮助,以保证proxy的安全

Lanternという新たなインターネットプロジェクトが始まっている。これはGoogle Ideasの後援を受けたプロジェクトだ。P2P(ピアツーピア)の信頼できるネットワークを構築することでXXX(グレートファイアウォール。検閲を避けるためKen Wangが伏せ字にした)をくぐり抜ける新たな取り組みだ。そのメカニズムはBitTorrentに似ている。規制のない地域でLanternのプログラムを実行しているコンピュータは、規制地域のコンピュータのプロキシとしての役割を担うことができる。プロキシの安全を確保するため、ユーザーは友人のネットワークにしか接続することができない。

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