ロシア:アメリカ国務省報道官が登場する「犬の心臓」が話題に

 
筆者による合成写真

筆者による合成写真

ロシアのネットユーザーたちの間で話題になっている一本のユニークな動画がある。アメリカ国務省のジェン・サキ報道官を非難するインターネットミームのシリーズ[en]最新作だ。 先週の金曜日(訳注:原文は2014年6月25日の記事)6月20日に投稿されたこの動画は、ミハイル・ブルガーコフの同名小説[en]を原作とした1988年のソビエト映画[en]「犬の心臓」のワンシーンが題材となっている。

原作でのこのシーンは次の通りである。元々は犬でありながら、人間の姿へと変身させられたポリグラフ・シャリコフ(ブルガーコフの描く「だらしなくナルシストな『ソビエトの新市民』の化身」)は、仕事の後に女性を自分の家へ連れて帰り、彼女との結婚を考えていることを彼を造り出した教授に伝える。作中、彼女はすぐにシャリコフが本当は犬であることを知り、愛想をつかせ、彼の元から去ってしまう。

話題となっている動画では、シャリコフの不運なフィアンセの顔の代わりにサキ報道官がデジタル処理で加えられている。この動画の作者は、同じシーンを使用した他2つのバージョンを製作している。他バージョンではサキ報道官に代わって、ユーロビジョン2014で優勝した異性服装倒錯者のコンチータ・ヴルスト氏、ロシアの政治活動家でソビエト反体制派であったワレーリヤ・ノヴォドヴォルスカヤ氏が登場する。

この動画の視聴数は21万回を超えており、ピーク時の6月22日には1日でおよそ9万回を記録した。動画の作者は「Viosmart」という匿名のユーザーで、2009年5月からYoutube上で活動している。彼が投稿した最初の作品は、2人のロシア人ミュージシャンがあたかも性行為を行っているかのように編集された27秒の動画だ。

Yandex(訳注:ロシアの検索エンジン)のブログ検索では、「サキ」「シャリコフ」というキーワードの組み合わせで検索すると、Viosmartの動画が公開された6月20日以降のソーシャルメディアへの投稿が2千件以上もヒット[ru]する。しかしその中からランダムに選んだ投稿を対象に調査をしても、このビデオがロシアのインターネットユーザー間でなぜそこまで話題にのぼったのかの説明をする手立てにはならない。TwitterやVkontakte、Facebookなどで「シャリコフと彼の恋人たち」とタイトル付けられたこの動画をシェアする人の多くは、ただリンクを再投稿して「いいね!」を集めるだけだからだ。

この動画には、ブルガーコフの原作におけるジョークの逆説的なユーモアがこめられていると思われる。原作でも、映画でも、シャリコフの「未来の花嫁」は彼が実は人間でないことを知ってショックを受ける。他の人々がこの動画を笑う理由の典型とも言えるのが、Facebookでサキ報道官の動画をシェアしたナターシャ・メレヒナ氏の「かわいそうなシャリコフ」という発言[ru]だ。映画に加えられた3人の女性たちは、あの卑劣な「ソビエトの新市民」よりもさらにひどいという意味がうかがえる。

この動画にこめられたアメリカ国務省報道官へのいたずらの真意が何にせよ、これだけは言える。女装家のヴルスト氏や肥満の陰謀論者であるノヴォドヴォルスカヤ氏と並べることで、彼女を喜ばせようとする意図はまずないだろう。

校正:Mayumi Amano

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