帝国主義って何?

(リンク先には英語、フランス語または日本語のページを含みます)

ウクライナ東部での紛争にせよ中央アフリカ共和国(CAR)での紛争にせよ、敵対する両陣営の行動はすぐに帝国主義的だと非難される。

たとえばクリミア、ウクライナ東部では親ロシア派の反政府主義者たちが市街地及びその他の地域を占領しているが(訳注:原文は2014年05月04日の記事)、欧米の指導者たちはこれをロシアの帝国主義的行動だと非難する。一方ロシア側は、西側が自分たちの見方を世界の他の地域に押し付けており、これは文化的な帝国主義に等しいと非難している。

これと同様に、マリ共和国と中央アフリカ共和国の両紛争に武力介入したフランスに対しても、これを帝国主義的行動だと非難する声がアフリカの一部にある。

超大国同士はお互いを帝国主義的だと非難するのに熱心だが、では帝国主義とはいったい何を意味するのだろうか?

帝国主義という概念についての調査

帝国主義という言葉は今日では通常「文化帝国主義」のことを指す。すなわちある国が他国に自分のイデオロギーや生活スタイルを押し付けることを意味する。このように、この概念はデリケートなので、安易に使われるべきではない。

われわれGlobal Voicesのウェブサイト では2008年から2014年までの間に帝国主義という単語(訳注:英語のimperialism)は200回使われ、どの大陸も一度はその話題の対象となっている。

また世界的な指標であるGoogle トレンドによる検索統計では、帝国主義について以下のような分析結果が出ている。

Les pays cherchant le mot impérialisme le plus souvent

帝国主義という言葉が最も頻繁に検索された国のランキング 

また、帝国主義と組み合わせて検索されたキーワードで多かったのがこれだ。

tops des mots associés à l'imperialisme sur Google

帝国主義を含むキーワード組み合わせのGoogle検索ランキング

フランス語の帝国主義(訳注:impérialisme)に関するGoogleトレンドの分析結果は予想通りで、帝国主義に関する検索は欧州発のニュースに集中している。以下に帝国主義に関係するニュースの見出しで 近年最も注目を集めたもの を示す。

またフランス語圏の都市の中ではセネガルのダカール市民が帝国主義の問題に最も関心を寄せているようだ。

Les villes ayant recherché le mot "impérialisme" le plus souvent - via Google Trends

Googleトレンドでフランス語の「帝国主義」(impérialisme)という単語が最も頻繁に検索された都市のランキング。

地域別にみた帝国主義

ウクライナ東部でのロシアの行動をめぐって、このところ両陣営が双方を帝国主義的だと非難し合っている。ウクライナが前大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ氏を追放し、クリミアが住民投票を経てウクライナから離脱、ロシア連邦に加盟したことを受けて、欧州のメディアはウクライナ東部に対するロシアの干渉について詳細に論評している。

北ヨーロッパ地域協力促進同盟(訳注:Nord-Europe)の共同創設者の一人Quentin Boulanger氏は、ウクライナ東部における情勢を単純に親欧州派対親ロシア派の対立と見てはいけない と戒めている。

La révolution actuelle n’a pas été initiée par des questions de politiques étrangères mais bien par des motifs internes. Il s’agit d’une opposition entre un large spectre de la société et un gouvernement kleptocratique, corrompu et abusif. Ce n’est pas l’est contre l’ouest et Monsieur Ianoukovitch n’est pas coupable d’amitié avec le Kremlin mais bien d’abus de pouvoir.

現在起きている革命はウクライナの外交問題から発展したのではなくて内政問題から発展したものだ。これは政府の金権汚職と権力乱用に対して市民社会が反旗を翻したもので、東西対立ではない。ヤヌコーヴィチ前大統領がクレムリン(訳注:ロシア政府の象徴)と親しくしていたことに問題があったのではなく、何よりもまず彼が権力を乱用したことが問題なのだ。

欧州以外の各地の識者は、西側諸国が世界各地でとっている帝国主義的行動には目をつぶってロシアだけを帝国主義的だと非難するのは 偽善だと批判 している。 確かに、ロシアの行動は帝国主義的なにおいがする。しかしクリミアがロシアとの特別な関係を維持したいと望んでいるのは疑いなく、それを無視することはできない。

中央アフリカ共和国の場合、フランスによる同国への軍事介入を望む声が多かった。この介入によって確かに暴力の勢いは収まったが、一方で同国では紛争が続いても誰も責任を問われないという複雑で厄介な状況が作りだされてしまった。

バンギ(訳注:中央アフリカ共和国の首都)のブロガーJean Batouは、ブログサイトContretempsで、フランスの軍事介入はミッション・クリープ(訳注:軍事介入が当初の計画を超えて泥沼に陥る)に 陥る危険性が高い理由について解説する。

Rien ne serait plus trompeur que d’envisager l’impérialisme français en Afrique au seul prisme de ses « chasses gardées postcoloniales », même s’il est par ailleurs prématuré de pronostiquer l’extinction de la Françafrique. Les autorités hexagonales ont ainsi commandité pas moins de trois volumineux documents sur les perspectives stratégiques de la France en Afrique. Le plus récent des trois annonce clairement la couleur : « L’Etat français doit mettre au cœur de sa politique économique le soutien à la relation d’affaires du secteur privé et assumer pleinement l’existence de ses intérêts sur le continent africain »

アフリカにおけるフランスの帝国主義的行動を、「フランスとその旧植民地との特別な関係」という視点のみから見るという間違いを犯してはならない。もちろん「フランサフリック」 (訳注:Françafrique、フランスと旧アフリカ植民地との特別な関係を象徴する言葉)の時代が完全に終わってしまったと主張するのは時期尚早ではあるが。フランス政府当局は、アフリカにおける同国の今後の戦略的展望について詳細な報告書を少なくとも3件委託した。その最新の報告書にある次の一言は核心を突いている。「フランス政府は、アフリカに利害関係を持つ民間企業を支援することにその経済政策の中心を置くべきで、政府はこれらの民間企業がアフリカ大陸に持つ利害を最大限尊重しなければならない。」

マリ共和国に対するフランスの軍事介入に対しては、識者からすでに多くの疑問の声が上がっている。たとえば国連における専門家でフランツ·ファノン財団の理事長でもあるMireille Fanon-Mendes-France は次のように述べている。

Il s’agit de profiter de la déliquescence d’Etats sous domination continue depuis les indépendances pour réintroduire directement une présence militaire camouflée derrière des armées locales dont nul n’ignore l’insigne faiblesse. Dans ce jeu géostratégique, le Mali devient otage d'une volonté des Etats impérialistes et de leurs soutiens.

フランスは、同国からの独立後もその影響下に甘んじてきた脆弱な国家を利用しているように思われる。フランスはそれらの国の脆弱で知られる正規軍の背後にフランス軍をひそかに再配備している。この国際政治ゲームの中で、マリは帝国主義国家の政治的意思と彼らによる「支援」の人質となってしまったのだ。

マリの作家Aminata Traoré氏は この見方に同意して、さらに次のよう付け加えた。

Aujourd’hui la militarisation pour le contrôle des ressources de l’Afrique fait parti de l’agenda. Ce qui se passe aujourd’hui au Mali est l’illustration d’une nouvelle étape de la politique de mainmise sur les ressources du continent, notamment les ressources énergétiques, sans lesquelles la sortie de crise, la croissance et la compétitivité ne sont pas envisageables par l’Occident.

今日、マリで軍事化が進んでいるのは、それを利用して同地域の地下資源を支配しようという超大国の計画の一環なのだ。今日マリで起こっていることは、エネルギーを含むアフリカ大陸の地下資源に対する政治的支配が新たな段階に入ったことの実例だ。これらの資源なしには、西側先進国の経済危機からの回復、成長および競争力の維持などは絵に描いた餅にすぎない。

帝国主義に関する分析はどれも、これらの事象を推し進める一つの要因を忘れているように思える。それはクリミアであれ、中央アフリカ共和国であれ、マリであれ、無視できないほど多数の国民が外国勢力の武力介入によって直接利益を得ているという点である。結局のところジェラルド・シーモア(訳注:英国の作家)の有名な言葉にあるように、「ある人にとってのテロリストは、別の人にとっては正義の戦士だ」ということだろう。

今日の国際政治情勢から、我々はこの名言の第2弾を作ることができるかもしれない。すなわち「ある人にとっての帝国主義者は、別の人にとっては正義の戦士の可能性が大きい」ということだ。

校正:Mayumi Amano

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