ホンダワラ類の海藻サルガッスムのおかげで、カリブの透き通った海が台無しに

Sargassum lines a Caribbean beach in 2011. photo by Mark Yokoyama; used under a CC BY-NC-ND 2.0 license.

サルガッスムがカリブの海岸を埋め尽くす。2011年。 撮影:マーク・ヨコヤマ 使用条件:CC BY-NC-ND 2.0

「サルガッソー」という言葉を聞いたら、西インド諸島の文学ファンなら直ぐに、イギリス領ドミニカ出身のイギリス人作家ジーン・リースの小説で、評判の高い「サルガッソーの広い海」を思いつくだろう。しかし、暗褐色の海藻、サルガッソーが今、合衆国南部からカリブ海諸国にかけての海岸線に大量に打ち上げられている。この海藻はサルガッスム(訳注:ホンダワラ類の海藻)とも呼ばれ、小さな浮嚢(ふのう)を持った、見栄えのよい海藻である。

この海藻の繁茂する海域があるということは周知の事実である。実際、北大西洋にこの海藻の名に由来して名づけられた海域が存在する。しかし先月(訳注:2015年7月)頃から打ち上げられたサルガッスムの莫大な量は、無視できないものである。気候変動が、サルガッスムの大量発生に係わっているとする人もいる。

当然のこととして、カリブ海諸国の政府は、この海藻が観光に及ぼす影響を懸念している。トバゴ島の東側沿岸には、サルガッスムがうず高く打ち上げられていた。そのため、バックホウ(訳注:掘削機械の一種)を用いて 撤去しなければならないほどだった。同島南東部の高級ホテルに宿泊している客は、大量に堆積した海藻が発する臭気で、気分が悪くなるとこぼしていた。とはいうものの、先週のトバゴ島は、休日を楽しむ観光客でにぎわっていた。同島の西海岸は、海藻の影響を受けていないからだ。こうした現象が生じたのは、潮流の影響による可能性が高い。

PADIの認定を受けたダイバー、デイブ・エリオットは、定期的にトバゴ島の海に潜水している。彼はこの度、サルガッスムに焦点を当てた短編のビデオを作製した。このビデオには最初に、海岸線から見た遠景が映し出される。次に、水中から撮った画面が映し出される。魅惑的で一見の価値のある画像である。

ビデオに最初に映し出された遠景をよくみると、海面全体が泥水のように見えるほどにサルガッスムで厚く覆われている。その場所は、トバゴ島の北東海岸に位置するスペイーサイドのティレル湾である。次の場面では、5時45分頃ダイバーたちが直ぐにサルガッスムの下の水中に潜入していく様子が映し出される。岸に近づくにつれ、海の中は暗くなる。カメラに画像を収めるために照明用ライトを点灯しなければならなくなる。また、方向を確認するためコンパスの使用が必要となる。海藻に厚く覆われていたので、潜水には多くの試練が伴った。エリオットは語る。

Occasionally, maybe as a wave would roll, the light would peer through from the top […] Meanwhile, on the sea floor, the area is very sandy. What was noticeable was the absence of the normal algae-eating fish that we know: the parrotfish, the angelfish, the surgeonfish, trumpetfish and all the other smaller versions…the damselfish and such like…there were no signs of these species of fish.

時々、波の動きに伴ってであろう、頭上から日光が差し込んできたりする。[…]一方、海底に目を向けると、この付近は非常に砂が目立つ。海中に潜ってみて顕著だったのは、海藻を餌にする我々になじみの魚がいないということだった。例えば、ブダイ、キンチャクダイ、ニザダイ、ヘラヤガラなどその他小型の魚類…スズメダイなど・・・これらの種の魚はどこにも見当たらなかった。

エリオットはすぐに、海底全体が「海藻で覆われてカーペットを敷いた」ようになっているのを見た。そして「海底にはあまり生物」がいないことにも気が付いた。このことは、環境問題研究家が、大量の海藻は海洋生物に影響を与える可能性があると懸念していたことと一致する。だが、トリニダード・トバゴ、海事研究所の地域教育担当職員、ロリー・リー・ラムは、新聞のコラムに下記のように記している。

Besides being a food source, this seaweed community supports a diverse ecosystem and provides critical habitat for a wide variety of sea life including crabs, shrimp, molluscs, fish such as mahi mahi, and sea turtles, and is a nursery and spawning area for others.

サルガッスムの群落は食糧供給源となっている。そればかりでなく、様々な生態系を維持するのに貢献している。また、カニ、小エビ、イカ、タコ、およびシイラなどの魚類、そしてウミガメといった多様な海洋生物の重要な生息地となっている。また、その他の生物の生育地や産卵域ともなっている。

エリオットと彼の潜水仲間はじきに、やむなくトバゴ島の北東にあるブルー・ウォーター・インの桟橋へ引き返す方向を探し戻ってこなければならなくなった。水面下の様子は、汚れていて薄気味が悪い。トバゴ島の漁民は、やはりこれまで悪影響を受けてきたといえる。

興味あることだが、4年前の2011年9月に、やはり西インド諸島地域にサルガッスムが大量に漂着したことがある。その時、バルバドスの80歳代の起業家、キャベンディッシュ・アトウエルが、処分に困っているサルガッスムから利益を生み出す方法を見出した。バルバドス政府広報局は、彼が、サルガッスムを原料にして肥料を作る過程をビデオ特集として作成した。

校正:Tamami Inoue

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