ロシア:立ち上がる作家たち

ロシアの詩人、エフトシェンコによる自己陶酔的な詩の一篇がある。

Поэт в России – больше, чем поэт.

ロシアの詩人は詩を書くだけではない。

1960年代にエフトシェンコによって書かれたこの一篇は、全体主義の下で言論の自由を
持つことができなかった人々の言葉を、詩人や作家が隠喩的表現によって代言している
という事について触れている。エフトシェンコ自身によると彼は慈悲深い人間だという。とにかくこれから自己批評を始めようと思う。

何人ものロシア人作家が新聞への論評寄稿やthe occasional petition[ru]に署名することによって市民社会の中で声を上げ始めている。中には集会にて演説をする者、デモ企画を手助けする者もいる。他にも集会を組む活動家や名が知れ渡るのに先立ち、選挙候補者として政党に登録する者までもいる。つまり少なくともロシアの知識層は問題の核心に迫りはじめ、エフトシェンコが持っていた意図よりもさらに深く踏み込んでいるのは明らかである。(彼はペレストロイカ晩期にソヴィエト人民代議員会に当選するに至ったが)

 

モスクワの不正選挙反対運動でのDmitry Bykov(ドミトリー・ヴイコフ)。2012年5月13日。 Evgeniy Isaev撮影 CC BY-SA 2.0

現在、9名の自称作家が主にオンラインを中心にロシア反体制派による調整評議会選挙(CC選挙)と呼ばれる選挙運動に出馬し、10人目は完全離脱する前に立候補するかどうかを考えている。しかし、作家たちだけがこの運動を率いてるわけではなく、ただ大部分を彼らが占めているだけということを心にとめておくべきだ。(200名以上の男女が含まれている)。

例えば、Oleg Kozyrev[ru]は反体制派ブロガー[ru]として最も知名度が高く、現在ヤンデックス(ロシアの検索エンジン)検索ランキングで59位[ru]だ。Konstantin Krylov[ru]はペンネームを使いSFを書いたことがあるようだが、彼は主に国粋主義の政治哲学者、評論家、さらにブロガーである。また、マイナーな詩人[ru]新聞コラムニスト[ru]cloud democracy[ru]の発起人、弁護士[ru]などもいて、彼らは全て執筆に関わる仕事をしている。

うち3人はヒットメイカーであるが、その中の1人、ドミトリー・ブイコフ[ru]は自身の立候補者プロフィール内ではナショナルベストセラー[ru]とビッグブック[ru]を含む彼の獲得したいくつもの文学賞をリストアップしているだけで、自身を作家と称していない。しかし、実際にブイコフはプロの作家である。小説家、伝記作家、作詩もかじっていて名前も良く知られている。昨年彼はほとんどの反体制運動に参加し、時には先導を担うこともあった。

ブイコフ氏がクセーニア・サブチャク派の候補者連合 [ru]の一員としてCC選挙に立候補した2日前、あいにく彼は9月15日に自身のフェイスブック上で同選挙を次のように批判した [ru]

Во-первых, никаких стопроцентно авторитетных и перспективных лидеров они не выявят. […]  Вторая причина относительной неважности будущих выборов заключается в том, что выбирать, по сути, некого

第一に、威厳があり、リーダーシップを持った候補者がこの選挙にはいない。[…]次に、この選挙には選ぶに値する候補者がいない。

9月17日、ブイコフ氏はサプチャク氏と知識層の見守る中で選挙登録を行った。その中にはCC選挙立候補者の中で2番目に有名な作家リュドミラ・ウリツカヤ氏 [ru]もいた。ウリツカヤ氏はRuNet上では控えめであり、ブログの更新も多くはない。しかしその名は国際的に名声を浴びる文筆家 [ru]として知られている。恐らく彼女の立候補 [ru]はサプチャク派に影響を与えるだろう。

Мы не политики и никто из нас не считает своей личной целью борьбу за власть.

我々は政治家ではないし、権力争いには目を向けない

ウリツカヤ氏とブイコフ氏がこぞってリベラル陣営に移動する中、ロシア極左派は知識層からの代理人を保持している。
セルゲイ・ウダルツォフ氏[ru]はセルゲイ・シャルグノフ氏と Zakhar Prilepin氏[ru]という2人の意欲的な左派候補者がいると発表した。

両者は左派的視点を持つれっきとした文筆家であり、オンライン誌 FreePress[ru]の編集をしている。また、両者とも政治家としての略歴を持つ。Prilepin氏は未だ受賞歴はないが、国家ボリシェヴィキ党の活動家として知られていた。彼の著作の多くは反政府主義者としての経験について論じている。

シャルグノフ氏は文学賞の最終候補者でもあり、2005年から2007年までは現在廃党となったドミトリー・ロゴージンの母国党の若手党代表を務めた。在任期間中彼は定期的にブログを更新していたが今ではほとんど更新が見られない。
母国党が解散し2007年に公正ロシア党となった時、Shargunov氏は初め議会選挙の候補者リストに含まれていた。しかしその後すぐに党から除名された。恐らく極左的な思想が原因だと思われる。

シャルグノフ氏とPrilepin氏は反体制団体Tusovka(ロシア語でニューウェイブの意)のメンバーではないので両氏とも反対側勢力に歓迎されるだろう。Prilepin氏はCC選挙への出馬を検討[ru]したが、結局シャルグノフ氏のみが候補者として登録をした。Prilepin氏は恐らく登録締め切り直前に前所属党の党首、エドワルド・リモノフ氏[ru]に牽制されたのかもしれない。

自身をペンギン(政治的な関心が無い人)ではない と称するボリス・アクーニン 撮影:2012年3月14日 撮影者:Pavel Samokhvalov

 

 

Удальцов сегодня похвалился, что левые будут “мощно представлены”  на выборах в КС. Он назвал помимо себя и  Ильи Пономарева  таких “левых”, как писатели  Сергей Шаргунов и Захар Прилепин. Я очень не советую моим друзьям Прилепину и Шаргунову  участвовать в  легитимизации  буржуазных вождей оппозиции, хитрые буржуи хот

 

左派が巨大な影響力をCC選挙において持つだろうとウダルツォフは高らかに語った。その人物として彼は彼自身とイリヤ・ポノマリョフの他にセルゲイ・シャルグノフと
Zakhar Prilepin等の左派系作家を名指した。私は親友のPrilepin と
シャルガノフが反対派の中産階級代表として立候補をする事に落胆している。彼らはただ私の親友を利用したいだけなんだ。

もう一人の作家は候補者リストにその名前がないことから話題となっている。ボリス・アクーニン、歴史家及びミステリー小説家であり、昨冬のロシア下院選反対運動ではネット上での活動が有名である。彼はブログ上で『政治の鳥類学』というタイトルの記事で人々に有権者として選挙に参加する事を求めている。

彼はその理由説明のためにマクシム・ゴーリキーの詩を手始めに引用し、鳥を使った難解な比喩で示した。彼は人々をカモメ(政治的に活動的な人)とアビ(政治的関心はあるが基本的に活動はしない人)そしてペンギン(政治的関心がない人の群れ)に分類する。彼によると選挙はカモメたちのためであり彼自身はアビなので参与はしない。この説明により人々はとても上手に分類されているといえるだろう

 

校正:太田尚志

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