プエルトリコ:トランスジェンダー・コミュニティーの横顔

(言語コードの記載のないリンク先は日本語のもの)
(訳注:原文で「Trans Community」となっている箇所は、トランスジェンダー・コミュニティーと訳した。)

サンファンの中心、サントゥルスの繁華街の道端。夜になると大抵、プエルトリコのトランスジェンダー・コミュニティーの人々が街頭で働く様子を見かける。 ウィッグを盛り、ハイヒールをまとった彼らの物語は、夜を徘徊するその様子を追った地元の小説映画写真集[es]から知ることができる。 プエルトリコの映画監督、カルメン・オケンド-ビジャールの新しいドキュメンタリー『注射 (原題:“The Needle”)』[en]は、街頭でのクルージングよりも、むしろ舞台裏に目を向け、そこで働く人々が頼りにする隠れた美容ビジネスを題材にした。

オケンド-ビジャールと共同監督ホセ・コレア・ビヘェールがカメラに収めたのは、ホセ・キニョーネス。自身のサントゥルスの住宅の外に、狭い美容クリニックを開いている。

ドキュメンタリー作品『注射』の主役、美のカリスマ、ホセ・キニョーネス(掲載許可取得済)

ドキュメンタリー作品『注射』の主役、美のカリスマ、ホセ・キニョーネス(掲載許可取得済)

コラーゲンとホルモンがたっぷり入った皮下注射器が彼の武器。 それを手に、トランスジェンダー・トランスセクシャルである常連客が渇望する、女性的美の理想への扉の門番になるのだ。

プエルトリコとニューヨークを行き来するオケンド-ビジャールは「プエルトリコで働いていたときに彼に出会った」と言う。「地域のトランスジェンダー、トランスセクシャルの人々の様子をとらえるビデオ・シリーズを撮っていて、そのとき、共同監督が彼のところに連れていってくれたの。」

キニョーネスは単なる注射器をもった男ではない。彼のクリニックは利用者たちのたまり場となっている。皆、街頭へ繰り出す前にそこに集まり、化粧のコツを交換したり、噂話をしたり、ただ談笑してみたりする。

オケンド-ビジャールは「彼はスピリチュアル・アドバイザーのような存在」と話す。監督は1ヵ月かけてキニョーネスを撮影した後、手元の膨大な量の素材を3年間かけて編集した。「彼のところへ行くと、彼は座って話しかけてくれる。利用者があそこへ行くと、彼に悩みを救ってもらえるの。」

http://vimeo.com/48602201[dead link]

プエルトリコ・クィア映画祭

11月15日、マンハッタンのIFCセンターで行われるノンフィクション映画祭、DOC NYC[en]の中のシリーズ試写で、この40分の映画が初披露された。さらに11月18日に は、LGBTTをテーマに、彼らを取り巻く問題などを扱った国際映画に焦点をあてたプエルトリコ・クィア映画祭[es]で、2回目のお披露目が行われた。

オケンド-ビジャールは「映画の内容を考えると、プエルトリコでの封切りは、 クィア映画祭で行いたかった」と話した。「キニョーネスが安心するような場所が欲しかった。受け入れてくれる観客がいるような場所がよかった」島の中で疎外されたコミュニティーに触れた本作について、彼女はそう付け加えた。

4年目[es]となる今年のプエルトリコ・クィア映画祭は、11月15日から21日まで開催。この映画祭の創設者はビクトル・ゴンザレス、レベカ・フラティチェリ、ハイメ・サンティアゴで、今回は10を越える国から15
以上の作品を上映。また、プエルトリコの短編作品を取り上げる共催企画BoriQueerには、地元の映画関係者も参加する。

この映画祭は、LGBTTコミュニティーやあらゆるタイプの映画ファンが出会い、議論を深めたり、作品の扱う問題について話し合う場となっている。テーマが強く、現地の人々が登場する『注射』は、ここでの議論に新たな重要な視点を投げかける。

・本記事執筆者によるスペイン語のさらに詳しいレビューはこちら

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