動画:パキスタン政府によるYouTube禁止に抗議、1回ずつのハグ

(特に断りのないリンク先は英語のページです。)

Screen-shot of the video

パキスタン政府によるYouTube禁止に抗議する動画「僕を取り戻したい人は、ハグしてください」からのスクリーンショット(制作: Pakistan For All)

パキスタンではYouTubeが禁止 されてから1年以上になるが、この動画共有サイトへの愛着は消えていない。YouTubeを使うためにプロキシやVPNサービスを利用するパキスタン人は多い。

YouTubeのために立ち上がったのは、Pakistan For All (以下PFA)という、少数民族の迫害に憤り、事態を憂慮した市民による団体だ。彼らは迫害者に抗議することで一致団結している。

最近PFAは動画共有サイトVimeo上に、YouTube禁止に抗議する映像を公開した。映像中ではYouTubeマスコットが「僕を取り戻したい人は、ハグしてください」というプラカードを手に南部の港町 カラチ[jp]をさすらう。

今回グローバルボイスは、ジャーナリスト兼ドキュメンタリー映像制作者でPFA創設メンバーの1人でもあるZiad Zafar氏に、インタビューを行った。

グローバルボイス (GV): この映像を制作した動機は何でしょうか?

Ziad Zafar (ZZ): 動機は簡単でした。私たちパキスタン人は皆、このようにして世界から切り離されることに非常に苛立ちを感じています。YouTubeは単なる猫の面白い動画や、つまらないブログではなく(ああ、でもそれすらとても懐かしく思っています!)、真に世界へ開かれた窓であり、新しい世代の人々がグローバルにコミュニケーションをする上で極めて重要です。YouTubeがあることで、パキスタン人は急激に拡大している世界的規模の知識経済に参加でき、そこでは情報へのアクセスがまさに民主的なのです。

Ziad Zafar of Pakistan For All

PFAのZiad Zafar氏

このことは、教育の機会が不平等で、世界で最も若年人口が多い国の1つであるパキスタンのような国には非常に重大です。国民からこうした重要な情報源を奪う政府の行為は犯罪同然です。

この映像はPFAが実施している#KholoBCというキャンペーンの一部で、私はそのメンバーの1人です。私たちは、インターネット上での、あらゆる形で行われる政府の検閲やコンテンツ規制に反対しています。私たちはパキスタンの人に気がついてほしいのです。国家の安全や宗教を装って、私たちのインターネット上の自由を損なう陰湿で組織的な試みが進んでいることに。 

国家検閲に対する組織的な抵抗がないことで、政府がインターネット上の自由への弾圧を一層強化しているのは明らかです。

Sabeen Mahmud (co-founder of PFA) and Ziad Zafar

PFA共同創設者のSabeen Mahmud氏(左)とZiad Zafar氏

 2012年3月、パキスタン政府は中国の金盾(グレートファイアウォール)と同様の、全国規模のコンテンツフィルタリングサービスの購入および導入を決定しました。このフィルタリングツールはカナダの「Netsweeper社」からの購入で、ここ数週間のうちにシステムの導入が完了しました。これは、パキスタンでのインターネット上の自由の未来に影を落とすような進展であると思いますし、このことを国民は認識しなければなりません。

YouTubeにハグ!#KholoBC  Ziad Zafar氏Vimeoへの投稿より

GV: とても面白い反検閲キャンペーンだと思います。どこからアイデアを得たのですか?

ZZ: 私たちがこの反検閲キャンペーンを実施しようとした主な理由のひとつには、公的または道徳的な圧力からYouTubeが禁止されたのではないという事実に対し、人々の注意を喚起したかったということがあります。冒とく的なコンテンツがあることを当初は口実としていたかもしれませんが、政府はYouTubeや他のソーシャルメディアを破壊的道具と見ているため、それらを抑え込もうと必死になっています。アラブの春からウォール街を占拠せよまで、YouTubeや他のソーシャルメディアは、近年世界を席巻してきた社会運動の新しい波の中心となってきました。パキスタンの官僚主義政府の考え方ではこのことがよく理解されており、彼らにYouTubeを再開しようという実際の意志はありません。

#KholoBC is a Pakistan for All campaign opposed to all forms of state censorship and content regulation on the Internet.

#KholoBC はPFAのキャンペーンの1つで、インターネット上でのあらゆる政府の検閲やコンテンツ規制に反対している。

「イノセンス・オブ・ムスリム」の公開後に起こった最初の世界的な抗議を除けば、政界や宗教界から政府に対し、YouTube禁止を支持する公的な働きかけは事実上ないことに注目する必要があります。ほとんどのパキスタン人はYouTubeの再開を望んでいます。パキスタンで最も閲覧数の多いウェブサイトのリストを見ると明らかなのですが、上位3位がプロキシサイトです!これはつまり、ネットにログインする人の大多数が、政府のコントロールを回避しようとしているということです。

GV: YouTubeのマスコットを他の都市にも連れて行く予定はありますか?

ZZ: #KholoBCのキャンペーンで、進行中のアイデアが他にもいくつかありますが、そうですね、いつかYoutubeマスコットは戻ってきますよ。

GV: パキスタンでの反応はいかがでしたか?

ZZ: 正直、熱心な宗教家からの拒絶反応を恐れて最初は少し心配していましたが、反応は好意的なものが圧倒的多数でした。忍び寄る恐怖感やパキスタンで広がりつつある検閲をよそに、一般市民が自らをオープンに表現するのを見られたことには、非常に安心しました。いくつかの宗教派閥からはYouTubeに対する反感があるかもしれませんが、パキスタン人の大多数は、YouTubeが冒とく的なコンテンツと同義でないと理解しています。

GV: 市民主導のPFAがどのように機能しているのか教えてください。

ZZ: PFAは革新主義や労働者階級の課題に取り組む市民とコミュニティグループの団体で、幅広い支持基盤を持っています。私たちは直接行動を信条としており、どのようなことも成し遂げるには一般市民を奮い立たせることが必要と感じています。自分達のため、お互いのために戦うようにと。私たちは人々が自ら関わり、政治に関心を持ち、この抗議活動に参加するように働きかけています。

Human chain in Karachi in solidarity with the minorities in Pakistan.

カラチでの人間の鎖。パキスタンの少数民族たちが手を取り合う。

GV: 活動にはどれくらいの市民が関わっているのですか? 

ZZ: 私たちは一般市民に支えられている有志の団体です。これまで多数の人が活動に関わり、私たちは着実に大きな全国ネットワークを広げています。

GV: 以前にPFAはカラチ、ラホール、イスラマバードで人間の鎖キャンペーンを行っていましたが、その経験はどのようなものでしたか?

ZZ: ペシャワールの教会で85人の命を奪った爆破テロの余波を受け、私たちはパキスタンのイスラム教徒こう頼みました。ミサが行われている間は前に出て人間の盾となり、キリスト教徒を守ってほしいと。何百人もの一般市民が私たちの呼びかけに応え、3つの都市で盾となってくれました。それ以来、私たちの活動に参加したいという市民から数えきれないほどの応援や団結のメッセージが届いており、PFAは日々大きくなっています。

 

校正:Kyoko Tashiro

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