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イギリスの有名なストリート・アーティスト、バンクシーがガザ地区に潜入、メッセージ性の高い一連の作品とミニドキュメンタリーを公開した。
バンクシーは自身のウェブサイトとYouTubeに、「Make this the year YOU discover a new destination(今年こそ、今までにない新しい旅を!)」と題した2分間の短いドキュメンタリー映像を公開した。動画を見ると、バンクシーは潜入のためにガザのトンネルを利用している。ガザにはエジプトとイスラエルに接する国境に、住民が掘削した 無数のトンネルがある。
この動画は観光宣伝ビデオを皮肉ったような内容で、バンクシーは「観光ルートから遠く離れた」この街においでと呼び掛けている。そして、ガザの人々はこの街が大好きで離れたくない、と述べてから、「離れたくても、離れる自由もないわけだけど」と付け足している。
次に、バンクシーはガザの隣人はとても親切だと語ったのち、イスラエルの「境界防衛作戦」でガザ地区では1万8000棟の家屋が破壊されたと続けている(「境界防衛作戦」については、グローバル・ボイスでも以前に取り上げた)。そして「開発機会はあちこちに」と述べた後、 「しかし爆撃が始まってから、ガザにはセメントの搬入が禁止されている」と続ける。
そのすぐ後に最初の壁画が現れる。「Bomb Damage(爆撃の惨禍)」というタイトルのこの作品は、ロダンの「考える人」からイメージを得たのかもしれない。この壁画の写真はバンクシーのインスタグラムにも掲載され、現在のところ1万2000の「いいね!」を獲得している(訳注:原文掲載日は2月26日)。「考える人」は哲学を表現したものだが、この壁画の女性は周囲の破壊された世界に心を閉ざしているように見える。
2つ目の壁画を最初に記事にしたのはストリートアートニュースだ。この壁画では、イスラエルによる占領の象徴である監視塔が、子どもの遊具に姿を変えている。監視塔は、「アパルトヘイト・ウォール」とも呼ばれるイスラエル西岸地区の境界壁に沿って、いくつも配置されている。この壁が完成すると全長はおよそ700kmに及ぶ。
3つ目の壁画のターゲットは、ネット上の猫好きな人たちだ。 この作品で子猫は手毬(まり)ではなく、鉄くずを丸めたボールで遊んでいるように見える。RT(訳注:ロシアのニュース専門局)によると、バンクシーは次のように語っている。「地元の人が近づいてきて、『すみません、この絵はどういう意味なんですか?』と聞くから、こう答えたんだ。僕のウェブサイトに写真を載せて、ガザの破壊された状態に目を向けてもらおうと考えている、ってね。でも、ネットで見ている人たちは、子猫の絵しか見ていないんだ」
動画では、子猫のそばでガザの子どもたちが遊び、父親がバンクシーのインタビューに答えている。
This cat tells the whole world that she is missing joy in her life. The cat found something to play with. What about our children? What about our children?
この猫は、喜びの見い出せない暮らしを世界中に訴えているんだ。猫は遊ぶものを見つけたが、わしらの子どもたちは? ここの子どもたちはどうだ?
最後に、バンクシーのメッセージをまとめたものが、ガザの壁に記した言葉として現れる。その文章は以下の通り。
If we wash our hands of the conflict between the powerful and the powerless, we side with the powerful – we don't remain neutral.
力を持つ者と持たざる者の争いに背を向けるなら、それは力を持つ側に立つことになるのだ。中立な立場などありえない。
バンクシーがパレスチナを訪れたのは、これが初めてではない。ヨルダン川西岸地区にある境界壁のパレスチナ側に描かれた壁画は、バンクシーの代表的な作品となっている。そのいくつかを紹介しよう。