シンガポール占拠デモはなぜ失敗したのか

どうやら、シンガポールの人たちは他の事に心を奪われていたようだ。シンガポール版の「ウォール街を占拠せよ」デモになるはずだった「ラッフルズ・プレイスを占拠せよ」イベントには、誰も現れなかったのだから。ラッフルズ・プレイスはシンガポールの金融街だ。

この デモ は、最初フェイスブック上で告知された。

「シンガポールを占拠せよ」は、一般市民が民主的プロセスに関わり、民主主義の新しい形をつくるためのものです。私たちの「指導者」が、もはや人々の代表となる責任を全うできないことは明らかです。そこで、シンガポールの金融街であるラッフルズ・プレイスの占拠に参加してくれる皆さんを募集します。

これは平和的な非暴力の抵抗運動で、大衆が民主主義に参加し、大衆の声で前向きな変化に影響を与えることを目指しています。残りの99%である私たちの声を届けましょう。

シンガポール人たちが行ったのはラッフルズ・プレイスではなく 食品イベント だったと述べている。

ニュースの中で「ウォール街を占拠せよ」デモ参加者たちがこれほど目立っていれば、模倣デモがキノコのようにあちこちに現れたとしても驚くにはあたらない。

何者かが立ち上げたフェイスブックのページがあるが、大衆を動かしてラッフルズ・プレイスに集う意欲を十分に湧かせることはできなかった。

ある人は、「今日はみんながラッフルズ・プレイスじゃなくて、Ben&Jerry(アイスクリーム会社)のチャンクフェスを占拠しに行ったんでしょ」と、フェイスブックにコメントした。シンガポール人の食品イベント好きを考えれば驚くことではない。

Patricia Lauは、主催者はまずイベントの目的 を明らかにすべきだったとフェイスブックにコメントしている。

‎@Occupy Singapore、それでラッフルズ・プレイスに行く目的は買い物?それともデモ?「ラッフルズ・プレイスを占拠せよ」イベントの目的をはっきりさせたほうがいいと思う。

Mr Brown は、ラッフルズ・プレイスには「デモ参加者」よりも報道関係者のほうが多かったと述べている。

今シンガポール関連で(狙ってないのに)一番ウケるフェイスブックのページは、Occupy Singapore。この連中は、ニューヨークの「ウォール街を占拠せよ」から始まった「占拠せよ」運動に自分たちも参加することを大仰に宣言した。
この得体が知れず手立てを知らない反逆者たちの指導の下で、「ラッフルズ・プレイスを占拠せよ」が行われるはずだった土曜日。開始時刻になっても、来たのは0人だった。デモ参加者より報道陣のほうが多かったよ。

デモの失敗は、違法の街頭デモに加わろうとする人たちに対する警察 の圧力によるものだとする声もある。Lucky Tanは、ラッフルズ・プレイスに誰も現れなかったのは、シンガポールの「抑圧的政治環境」の反映 だと述べている。

シンガポール人がラッフルズ・プレイスに現れなかったのは、シンガポールには問題がないからだとは言えない。この国の所得格差は発展途上国の中では最大で、デモが起きている大半の国々よりも大きい。深刻な構造的失業と大規模な外国人流入に伴う根強い不満がある。今日、ラッフルズ・プレイスでは何も起こらなかった。これは抑圧的政治環境、厳罰法、市民が自分達には変えられない、変えようとしちゃいけない、今の社会で正しくないことを変えようなんて気にならないよう信じ込まされていることの悲しい影響だ。

Gilbert Goh は、シンガポール人には「占拠せよ」型のデモは時期尚早だと考える。

シンガポール人は、かなり気質に違いがあって、個人主義でガツガツしてない。不法街頭デモを呼びかける主催者が対象にするような人たちじゃないよ。公共の場で反抗してまで法に立ち向かおうとする奴はいない。警察に捕まるだけじゃなく、逮捕されれば職を失う危険だってあるんだから。おそらく僕らは、効果的に街頭デモをやるにしては、あまりにも恐怖と文化的抑制に封じ込まれすぎているんだよ。当局の厳しい締め付けを考えれば、シンガポールで「ラッフルズ・プレイスを占拠せよ」デモが出来る日は絶対に来ないだろう。異論は全部潰されるから、シンガポール人が不満をぶつけられる場所はネット上しかない。

Ng E-Jay は、シンガポールの経済格差に対するデモには妥当な理由があると主張している。

でも、シンガポール人が直面している問題は、世界中のデモ参加者が掲げている問題と全く同じだ。文明社会に住む大多数の人たちが平和的な集会の自由を楽しめるけど、シンガポール人にはそれがない。だからといって、シンガポール人にとって問題が現実味を帯びていないというわけでない。平和的な集会の否定は問題をカーペットの下に隠してしまうだけで、政府がこれ以上問題を管理して抑えられなくなる時までくすぶり続ける。

funny little world は、デモを行おうとした主催者の試みを評価している。

彼らのメッセージには必ずしも(まだ)賛成じゃないけど、彼らが集まって自分達の声を伝えようとした権利は支持する。シンガポールの状況を知る者としては、主催者がこういった試みを行おうと一歩踏み出したことには敬意を払わなきゃ。少なくとも彼らは、ただキーボード上で戦う人達じゃないから。私が見たいくつかのシンガポール人のコメントも、どんなに平和的なものであっても街頭デモを嫌悪するというシンガポール人にありがちな心情をさらけ出すものだった。どんな形の公開集会も国の安全と経済成長を損ない、したがって「自分たちを破滅させるものだ」という誤解があるように思える。また、どんな形のデモも結局はカオスになり、シンガポールが暗闇に陥ると信じている人が多いようだ。

しかしfunny little worldはまた、計画の不手際も批判している。

すごく残念。単に、計画性が足りなかったんじゃないかな。フェイスブックやツイッターのページを作ってみんなに集まるよう呼びかける以外にもデモを立ち上げて組織する方法はいろいろあるでしょ。

主催者は既にデモの失敗について謝罪 しており、次回はもっと大規模でより良いアクションを計画することを約束している。

主催者グループは、「メディアに話さなかったからといって、私たちがそこにいなかったわけではありません。勿論、支持基盤を得られなかったことにはとても落胆しています。手配と計画がなっていなかったという批判を受入れ、不手際をお詫びします」とコメントしている。また、集まってくれた人たち全員への感謝を示し、「次回はもっと大規模で、より良いもの」を行うと約束している。

この記事は、特集 #Occupy Worldwide の一部です。
校正者 Ayumi Nakajima

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