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少子化で消えゆく里山の小学校

廃校になった、ある里山の小学校。広々した校庭に雪が降る。撮影:Yuko Aoyagi

数年前廃校になった、ある里山の小学校。広々した校庭に雪が降る。茨城県、2008年。撮影:Yuko Aoyagi

全校生徒9名。地域住民とも名前で呼び合い、彼らの助けで学校で野菜を作る。自分たちで丁寧に袋に詰め、朝市で売る。小さな学校ならではの教育をしてきた、ある過疎地の公立小学校が、保護者らの存続活動もむなしく、今年度を最後に廃校になる。

富山県の高岡市立西広谷小学校は昨年で創立120周年、高岡市中心部から車で約30分の山間部にある。児童数は1988年には47人だったが、その後減り続け、地元住民が存続活動を行なった結果、2009年に地元以外の児童を受け入れる制度「小規模特認校」の適用を受けた。この制度によって、通学区域外の市内全域から希望者を募り、数家庭が保護者の送り迎えで通学している。豊かな自然環境の中で地域住民に支えられながらの少人数教育では、市街地の学校では考えられないような独自の体験ができ、児童や保護者の満足度は高かった。
しかし、2014年3月に通学区域内の児童が全て卒業してしまい、新たな入学予定の児童もいないことを理由に、高岡市教育委員会は2012年9月10日の臨時会で、この小学校の廃止を決定した。

古来、日本は農業国で、この小学校のような里山の風景は全国いたるところで見られた。戦後、高度成長期を経て人口は都市に集中し、農山村の人口は減り続けている。また子供の数が少ない少子化は大きな社会問題であり、年少人口率は13.1%と、世界主要国の中でも最低である。少子高齢化は全国的な傾向だが、農村部ではその傾向はさらに著しい。

一方で、小中学校におけるいじめや自殺・不登校は、近年全国的に大きな社会問題となっている。市街地の学校では子供あたりの先生の数も少なく、地域の大人とのつきあいは希薄で、同じ年齢の子どもが30~40人の集団で毎日過ごす中、つきあいのストレスも大きい。子ども自身が社会で何らかの役割を果たし誇りを覚える機会は少なく、遊びの種類もゲーム・ネットなどの閉鎖的な遊びが主流を占める。こういった社会環境も問題の原因のひとつと考えられている。

この小学校のような小規模特認校では、先生の目が児童に行き届き、地域の住民と児童が密接に触れあい、いろいろな年齢の子が一緒になって自然の中で遊ぶ。不登校に陥った子どもたちが自分らしさを取り戻せる場としても期待する声がある。

過疎地の小学校の存続に希望を与え、都市部で不登校に悩む家庭にも一筋の光となる小規模特認校制度だが、教育行政にとっては1人あたりのコストが非常に高く、財政上のお荷物となる。市教委は2012年6月、学校廃止を検討するため通学区域審議会を招集した。審議会は学校運営経費の他、地元児童がいなくなると地域住民の協力が得にくいことを問題視した。地域住民や保護者らは存続を求め、地域人口270名を上回る409名分の署名を集めて市長と教育長あてに提出したが、審議会はそれを全く顧みることなく、7月23日に小規模特認校制度の廃止を答申。市教委は答申を受け、8月30日の定例会で小規模特認校制度の廃止を決定、さらに、保護者らに知らされずに開催された9月10日の臨時会で、小学校の廃校を決定した。

保護者の一人karisumasuuさんは自身のブログで、この決定過程に憤る

これまで教育委員会と保護者との間で話し合いが幾度と行われ、署名活動もやり、最後は教育長まで引きずり出しましたが本当の教育よりも金ありきの教育委員会の方針は変わらず2年後国吉小学校と統廃合されることとなりました。
>校長、教頭、現場の先生も絶賛のこの小学校、教育委員会は現場の先生に事情を聴くこともありませんでした。

高岡市内のコミュニティハウス「ひとのま」スタッフも、この決定に異議を唱える

「子供にとって必要な教育とはどういうものなのか」ということを本当に考えなくてはいけないのは教育委員会や審議会ではない。

子育てを行っている当事者である親や、
子供たち本人たちであり、
実際に関わっている教員であり、
地域の大人たちであり、
私たち市民ひとりひとりであるはずだ。

我々が当事者として高岡の教育を考える機会を与えず、むしろ隠すようにひっそりと行う。
そのことが高岡市の教育環境にいい影響を及ぼすプロセスだとは思えない。 

「ひとのま」では去年9月、西広谷小学校の保護者の話を聞く会「学校を考える」を開催した。
また保護者のKodamaNorikoさんやSanoRieさんらは、今年9月のNPO法人「富山・いたずら村・子ども遊ばせ隊」の講演会や、11月のFOUR WINDS乳幼児精神保健学会広島大会で、それぞれ場所を借りて特認校のことを発表した。発表用資料の中でこう訴える。

明るい挨拶やきれいな話し方が上から下へと受け継がれ、ルールも自然に学ぶ。上の子は助け教えることに誇りを持ち、下の子は上の子を信頼し憧れる。

[...]伸びて育つ子どもの姿を逃さず語りかけ、文章で表し、認められほめられる喜びを子どもたちに伝える大人たち。口々に「いい学校」と言われ、この学校で学べてよかったと信じる子が育っている。 前の学校を休み続けた子に笑顔が戻り、緊張で声が出なかった子が転校して大声で話す。集団になじめず自信を失っていた子が大役を果たす。先生たちもみずみずしい心で教える楽しさを取り戻す。小さな学校にこそ豊かな育ちがある。

[...]子供達の周りに先生や地域の方や親がいて、子供達自身が小さな村社会を作り、時には葛藤を通じて、悩み、傷つき、そして生きる力を育み、大きな社会に出る準備をすること、それが教育ではないでしょうか。

KodamaNorikoさんらは、廃校跡に「子どもが行きたいと親にせがむような学校」「不登校・発達障害の子にも対応する、特認校型の公設民営の小中一貫校」を新設したいという夢を持っている。

『生きる力』を育む教育は、今や日本では許されない贅沢なのだろうか。このように廃校になる公立学校は、日本全国で毎年500校程度になる。

学校の要望により画像・音源を差し替え・削除致しました。学校や関係者の方にご迷惑おかけしたことをお詫びします。
  • Masaaki Sakaguchi

    今本当に必要な学校教育がここにはあったのだと思います。

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